2017年1月30日月曜日

【149冊目】Nicholas Evans, The Horese Whisperer (PR Level 3)

やさしい英語の本、通算149冊目は、
ペンギン・リーダーズのレベル3(1200語レベルの)の13冊目として、

イギリスの小説家
ニコラス・エヴァンス(Nicholas Evans, 1950年7月26日- )の
小説『ホース・ウィスパラー』を読みました。


Nicholas Evans
The Horse Whisperer

Retold by Andy Hopkins and Jocelyn Potter
〔Penguin Readers Level 3〕
This edition first published 1999
19,775語

本当は、
ペンギン・アクティブ・リーディングのレベル3
(1200語レベル)の7冊目として読む予定だったのですが、

ペンギン・アクティブ・リーディングのシリーズは
一時的に購入できない状況が続いているので、

ペンギン・リーディングのシリーズにさかのぼって、
購入し読んでみることにしました。



小説『ホース・ウィスパラー』は、
著者45歳の時(1995年10月)に刊行された小説です

刊行後間もなくアメリカで映画化され、
1998年5月に公開されました。日本でも同年10月に
「モンタナの風に吹かれて」という邦題で公開されていますが、
今まで知りませんでした。

内容を知らないまま、
「ホースウィスパラー(馬にささやく人)」
という題名に惹かれて手にしました。

調べてみると、
ホースウィスパラーとは、
心に深い傷を受けた馬と心を通わし、
その傷を癒やす能力をもった人々のことだそうで、

そんな心の傷を癒やす風の
穏やかな小説かしらと勝手に想像していましたが、

読んでみるともっと人間臭い、
生命力あふれる物語で、
どろどろした暗い部分もひっくるめて、
生きることの意味を問いかける、
力強さのある小説でした。

これがデビュー作だったこともあって、
筆者が書きたかったことを大盤振る舞いし、
色んなものを詰め込みすぎな印象もありましたが、

結果として、
大きな感動のもとに読み終えることができたので、
読んでよかったと思える1冊になりました。


  ***

翻訳は村松潔(むらまつきよし)氏の新潮文庫を手に入れました。


ニコラス・エヴァンス著/村松潔訳
『ホース・ウィスパラー(上・下)』
(新潮文庫、1998年9月)
 ※初出の単行本は、新潮社、1996年10月刊行。

ざっと見た限りでは、
よくこなれた読みやすい訳文に仕上がっていました。
少し時間を置いてから、読んでみようと思います。


※第149冊目。総計1,355,051語。

2017年1月26日木曜日

【読了】サマセット・モーム著/金原瑞人訳『月と六ペンス』(新潮文庫、2014年)

イギリスの小説家
サマセット・モーム
(Somerset Maugham, 1874年1月25日-1965年12月16日)
の小説『月と六ペンス The Moon and Sixpenceを読みました。
著者45歳の時(1919年)に刊行された作品です

金原瑞人(かねはらみずひと, 1954年11月29日- )氏の翻訳で読みました。
訳者59歳の時(2014年4月)に新潮文庫の1冊として刊行されました。


サマセット・モーム著/金原瑞人訳
『月と六ペンス』
(新潮文庫、2014年4月)

新潮文庫から刊行された時に、
すぐに購入して読みかけたのですが、
出だしの20頁ほどのつまらなさに辟易して、
しばらく「積ん読」状態になっていました。

今年、1月3日から3月20日まで愛知県美術館で
「ゴッホとゴーギャン展」が開催されることを知り、

展示を観に行く前に、
フランスの画家ポール・ゴーギャン
(Paul Gauguin, 1848年6月7日-1903年5月8日)
をモデルにした小説『月と六ペンス』を読んでみようと思いました。

改めて読み始めてみると、
はじめの2章さえ我慢すれば、あとは評判通りの面白さで、
最後まで一気に読み進めることができました。

読んでいて感じるのは、
著者モームの並外れた頭の良さで、

小説全体がすみずみまで、
よくぞここまでというレベルまで緻密に計算され、
知的にコントロールされながら、
全体として読みやすく整理されていて、
とても上手な小説だと感じました。

絵画という言葉では表現しにくいテーマを正面から扱いながら、
ここまで説得力を感じられる小説は初めて読みました。

ただ私とは、
本質的に違う感性をもっているようで、
上手いなと感じるところが多数ありながらも、
あまり共感はしない、
私から少し距離のある小説でもありました。

でもしかし、
ここまで書ける小説家というのも稀なことだと思うので、
もっと他の小説も読んでみたくなりました。


翻訳は、
行方昭夫(なめかたあきお 1931.9- )氏の岩波文庫と、
土屋政雄(つちやまさお 1944.1- )氏の光文社古典新訳文庫
も手に入れました。
読みやすさ重視で、金原訳を選びました。

金原訳で少し読み進めてから、
土屋訳の美しさにも惹かれ、心移りしかけたのですが、
再読の楽しみに、取っておくことにしました。


行方昭夫訳
『月と六ペンス』
(岩波文庫、2010年7月)


土屋政雄訳
『月と六ペンス』
(光文社古典新訳文庫、2008年12月)

金原氏によると、
モームは短編がいっそう面白いそうなので、
次は短編集を読んでみようかと思っているところです。

2017年1月13日金曜日

【148冊目】John Steinbeck, The Pearl (PAR Level 3)

やさしい英語の本、通算148冊目は、
ペンギン・アクティブ・リーディングのレベル3(1200語レベル)の6冊目として、

アメリカの小説家
ジョン・スタインベック
(John Steinbeck, 1902年2月27日-68年12月20日)の
中編小説『真珠』を読みました。

筆者43歳の時(1945年12月)に発表された作品です


John Steinbeck
The Pearl

〔Penguin Active Reading Level 4〕
This edition published 2007
13,824語

スタインベックは
食わず嫌いで暗く厳しいイメージが先行し、
まともに読んだことがなかったのですが、

年末に、
偶然『エデンの東』のDVDを観る機会があり、
その意外な面白さに惹きつけられました。

それからすぐに原作の翻訳を手に入れたのですが、
映画とはだいぶ印象が違っていたので、
読むのを止めて本棚に積んである状態です。

ですから小説としては、
この『真珠』が初スタインベックになります。

これは1940年の春に
メキシコ北西部にあるカリフォルニア湾で、
友人の海洋学者と行った調査旅行のときに、
ラパス(現在のメキシコ合衆国バハ・カリフォルニア・スル州の州都)
で聞いた話に基づく寓話風の小説です。

1944年11月から翌2月にかけて執筆され、
1945年12月に「The Pearl of the World 」の原題で、
月刊誌上に発表されました

その後1947年に単行本で刊行する際に、
『The Pearl 』と改題されたそうです。

※以上の書誌は、ジョン・スタインベック著/中山喜満訳『真珠』の訳者解説119-121頁を参照。


   ***

読後感。

ありがちな教訓的なお話なので、
途中で退屈してもおかしくなかったのですが、

情景描写にすぐれ、
それにともなう登場人物の心の動きが的確に伝わって来て、
飽きる間もなく最後まで読み進めることができました。

寓話ですが、
子供向けのハッピーエンドに終わる甘いお話ではなく、
人生の不条理な側面を厳しく描いてある、
ピリリと引き締まった大人の寓話でした。

読んで明るくなるお話ではないので、
あまり好きとは言えないのですが、

スタインベックの筆致には、
粘質的な暗さでまとわりついて来るような所はなく、
カラッとした怒りがまっすぐに伝わって来るので、
ほかの作品も読んでみたいと思いました。


   ***

翻訳は、18年ほど前の
中山喜満(なかやまよしみつ)氏によるものを
手に入れてみました。


中山喜満訳
『真珠』
(大阪教育図書、1999年1月)

原著を読むのに役立ちそうな、
非常に丁寧な訳文なのですが、

日本語らしいリズムに乏しく、
読んでいて、物凄くたいくつなお話に思えてきたので、
読むのを止めてしまいました。

そこでもう1冊、
大門一男(おおかどかずお)氏の翻訳を手に入れました。


大門一男訳
『真珠』
(角川文庫、1957年8月)

こちらは文学作品としての薫りを感じる訳文なので、
読むなら大門訳を選ぶべきなのですが、
今から60年前の訳業なので、それなりに古さを感じることも確かです。

そろそろどこかから、
瑞々しい言葉でつづる
新訳が出てくれないかしらと、
密かに期待しています。

※第148冊目。総計1,335,276語。


2017年1月4日水曜日

【読了】冨田浩司著『危機の指導者チャーチル』(新潮選書)

現役の外交官である
冨田浩司(とみたこうじ 1952- )氏による
イギリスの政治家ウィンストン・チャーチル
(Winston Churchill, 1874年11月30日-1965年1月24日)
の評伝を読み終えました。


冨田浩司著
『危機の指導者チャーチル』
(新潮選書、2011年9月)


冨田氏の略歴については、表紙カバーのそでに、

「1957年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。1981年に外務省に入省し、(中略)在英国日本大使館公使を経て、2009年から北米局参事官に就任(日米安保関係等を担当)。英国には、研修留学(オックスフォード大学)と2回の大使館勤務で、計7年間滞在」

とまとめてありました。執筆の経緯については、本書のあとがきに、

「本書は、二〇〇六年から〇九年まで、筆者がロンドンの日本大使館に勤務していた間に書きためた素材を基にしている。しかし、チャーチルに対しては、一九八〇年代前半の最初の英国勤務時代から関心を抱き続けてきたので、筆者にとっては二十数年越しのプロジェクトと言える」

と記してありました(301頁)。


昨年の5月に
足沢良子氏による子供向けの伝記を読んだのに続く、
2冊めのチャーチルです。

テーマを7章にしぼりながら
チャーチルの生涯を大まかに描いていく
大人の一般向けのチャーチル入門といった体裁で、
興味深く読み進めることができました。

日本人による先行研究への言及はほとんどないのですが、

直接原書に当たられて、
イギリスにおける最近のチャーチル研究を
筆者なりに消化されている点がありがたく、
非常に勉強になりました。

さまざまな方面への目配りを利かせて、
いろいろな内容を詰め込みながらも、
全体がうまく調和して、飽きずに最後まで読み通せたのは、
冨田氏の筆力の賜物でしょう。

読了後、この稀有な人物への興味が益々大きくなりました。

チャーチルへの愛情を基調とした書物であることは確かなので、
大人向けの最初の1冊としてお薦めできると思います。


チャーチルにもまたすぐに戻ってくるつもりですが、
次は、私が中学生のころに現役で活躍されていた記憶の残る、
レーガンとサッチャーの評伝を読もうと思っていて、
すでに手に入れてあります。


ニコラス・ワプショット著
久保恵美子訳
『レーガンとサッチャー 新自由主義のリーダーシップ』
(新潮選書、2014年2月)

この著者にはハイエクとケインズの評伝もあって、
そちらも気になっています。

読み終えたらまたこちらで紹介します。