2016年2月29日月曜日

【読了】Arnold Bennett, The Card (OBW Stage3)

やさしい英語の本、通算127冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ3(1000語レベル)の19冊目として、

イギリスの作家
アーノルド・ベネット(1867.5-1931.5)の
小説 『ザ・カード 当世人気男』 を読みました。

著者43歳の時(1911.2)に出版された作品です


Arnold Bennett
The Card

Retold by Nick Bullard
〔Oxford Bookworms Stage 3〕
First published in the Oxford Bookworms Library 2002
This simplified edition (c)Oxford Universty Press 2008
11,100語

一通り読み終えたはずの
オクスフォード・ブックワームズのステージ3の中に、
気になる一冊を見つけました。

まったく知らない作家でしたが、
少し調べてみると吉田健一氏の翻訳も出ていたことから、
私が無知なだけと思い、
翻訳とともに手に入れて読んでみることにしました。

これが思いのほか面白い、
生きる知恵にあふれた痛快な小説で、
楽しみながら読み進めることができました。

貧しい家柄に生まれた主人公が、
小さな失敗をはさみつつも、
それを上回る成功を重ねて徐々に成り上がっていくお話でした。

どうやってお金を儲けるのか、
という俗なテーマを扱いながら、
自助の精神に貫かれた主人公の明るい性格のもと、
清々しい読後感が残るのは、
ベネットの筆力の賜物でしょう。

日本でこういう
カラッとした明るい印象の、
生きる知恵を巧みにおりまぜた小説ってあるのかな、
と思い起こしてみると、
井原西鶴の名が浮かんできました。

似てるといえるほど読んでいるわけではないので、
近々西鶴を読んでみようと思います。


  ***

翻訳は吉田健一氏のがあるのみです。

当世人気男 (1978年) (世界ユーモア文庫〈8〉)

吉田健一(よしだけんいち)訳
『当世人気男』
(筑摩書房、1969年6月)
 ※初出は筑摩書房〔世界ユーモア文学全集5〕1961年4月。
 ※筑摩書房〔世界ユーモア文庫08〕新装版、1978年2月に再録。

古本で1978年の「新装版」を手に入れてみましたが、
紙質が悪く黄ばんでかなり読みにくいレベルだったので、
初出の1961年版を手に入れたところ、
こちらは今でも十分読める紙質でした。

吉田氏ならではの、
よく練られたわかりやすい翻訳に仕上がっているようなので、
こちらで読んでみようと思います。


なお、このブログを書くために、
ベネットについて調べはじめて気がついたのですが、

ベネットは随筆の名手でもあって、
学生の頃に渡部昇一氏の翻訳で、
彼のエッセイを読んでいたことに気がつきました。

本題からそれて来るので、
とりあえず書名だけ整理しておきます。
渡部訳の分以外は網羅してありません。


渡部昇一訳・解説
『自分の時間』
(三笠書房、1982年7月)
 ※三笠書房〔知的生き方文庫〕1990年2月に再録。
 ※三笠書房、1994年12月、2003年2月に再刊。
 ※原著名How to live on 24 hours a day 』(1910)

渡部昇一訳・解説
『自分を最高に生きる』
(三笠書房、1983年4月)
 ※三笠書房〔知的生き方文庫〕1986年1月に再録。
 ※三笠書房、1993年6月に再録。改題『自己を最高に生かす!』
 ※原著名How to make the best of life 』(1910)

渡部昇一訳・解説
『「自分脳」で生きる』
(三笠書房、1984年4月)
 ※原著名The human machine(1908.11)

渡部昇一・下谷和幸(しもたにかずゆき)訳
『自分の脳力を“持ち腐れ”にするな!』
(三笠書房、1990年4月)
 ※原著名Mental Efficiency 』(1911)

北沢あかね訳
『人生を豊かにする時間術』
(ソフトバンクパブリッシング〔フォーエバー選書〕2005年4月)
 ※原著名How to live on 24 hours a day 』(1910)
 ※原著名Married life
       (別名 The Plain man and His Wife )』(1913)
 ※原著名Friendship and happiness
       (別名 The Feast of St.Friend )』(1911)


もう少しいろいろ読み直してから、
改めて書き直そうと思います。


※通算127冊目。計1,058,458語。

※Wikipediaの「アーノルド・ベネット」を参照。

2016年2月15日月曜日

【読了】Jack London, White Fang (MMR Level 3)

やさしい英語の本、通算126冊目は、

マクミラン・リーダーズの
レベル3(1100語レベル)の13冊目として、

アメリカ合衆国の作家
ジャック・ロンドン(1876.1-1916.11)の
小説『白い牙』を読みました。

著者30歳の時、
月刊誌『THE OUTING MAGAZINE』
1906年5・6・7・8・9・10月号に掲載されました。


Jack London
White Fang

〔Macmillan Readers Level 3〕
This version of White Fang by Jack London was retold by
Rachel Bladon for Macmillan Readers
First published 2008
This version first published 2008
12,656語

3年程前(2013年2月)に、
ペンギン・リーダーズのレベル2
(600語レベル/総語数7,746語)で読んで以来、
2冊目の『白い牙』です。

先に取り上げた
『野性の呼び声』の続編というべき作品で、
個人的には『白い牙』のほうが好みに合います。

野性の狼ホワイト・ファング(白い牙)が、
幼いうちに人間に捕らえられ、
人間とともに生きていくうちに、
時に粗暴で残虐な扱いを受けながらも、
最終的に、信頼しうる飼い主から深い愛情を得、
幸せになるまでが描かれています。

前作は犬ぞりの場面がたくさん出て来て、
冗長に感じるところもあったのですが、
今回は物語としての構成が巧みで、
飽くことなく読み進めることができました。

前作同様、
生きることの残酷な現実からも目をそらさずに描き込みながら、
前作とは違って最後はハッピーエンドで終わるので、

続編のほうが、
誰にでもわかりやすく親しみやすい作品だと思いました。

やさしい英語では、
10,000語をこえてくると
それなりに読みでがあるのですが、
さほど苦労することもなく、
読み進めることが出来ました。


  ***

翻訳は、
白石佑光氏と辻井栄滋氏のお二人のが、
特に優れていると思います。
読みやすさ重視なら辻井氏、
文学的な薫りを愉しむなら白石氏でしょうか。


白石佑光訳
『白い牙』
(新潮文庫、1958年11月。47刷改版、2006年4月)


辻井栄滋訳
『白牙』
(現代教養文庫、2002年6月)
 ※辻井訳『決定版 ジャック・ロンドン選集2 ボクシング小説集・白牙』(本の友社、2005年11月)に再録。

他にも以下の翻訳が見つかりましたが、
深町氏のほかは実物をまだ目にしていません。

深町眞理子訳
『白い牙』
(光文社古典新訳文庫、2009年3月)

堺利彦訳
『ホワイト・ファング ― 白牙』
(叢文閣、1925年10月)

本多顕彰訳
『白い牙』
(岩波文庫、1936年2月)

北村喜八訳
『白い牙』
(新潮文庫、1940年6月)
 ※初出は新潮社〔世界文学全集 第2期9〕1931年12月。

山本政喜訳
『白い牙』
(角川文庫、1953年)
 ※初出は万有社、1950年3月。

阿部知二訳
『白い牙・荒野の呼び声』
(東京創元社〔世界ロマン全集 第28巻〕1957年10月)

白木茂訳
『白い牙』
(ポプラ社〔世界の名著33〕1969年2月)

辺見栄訳
『白い牙』
(講談社〔世界動物文学全集30〕1981年4月)

大野進編訳
『白い牙』
(ぎょうせい〔新装 少年少女世界名作全集17〕1995年2月)

神宮輝夫編訳
『白い牙』
(講談社〔痛快 世界の冒険文学20〕1999年5月)

1925年にはすでに翻訳されていたことに驚きました。
まずは白石訳か辻井訳を読み終えてから、
さらに以前の翻訳も集めていこうかと思います。


※通算126冊目。計1,047,358語。

2016年2月2日火曜日

【読了】Mary Shelley, Frankenstein (MMR Level 3)

やさしい英語の本、通算125冊目は、

マクミラン・リーダーズの
レベル3(1100語レベル)の12冊目として、

イギリスの女性小説家、
メアリー・シェリー(1797.8-1851.2)の
小説『フランケンシュタイン』を読みました。

著者20歳の時(1818.1)に出版された作品です


Mary Shelley
Frankenstein

〔Macmillan Readers Level 3〕
This retold version of Margaret Tarner for for Macmillan Readers
First published 1986
This edition first published 2010
6,879語

昨年8月に、
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ3(1,000語レベル)で読んで以来(総語数9,685語)、
2度目の『フランケンシュタイン』です。

語彙レベルは多少上がっていますが、
総語数が3,000語少なくなっているからか、
苦労なくすらすら読み進めることができました。

なお前回は、
原作の内容がほぼそのまま要約されていたのに対して、

今回のはわずかですが、
原作にアレンジが加えてありました。

編者の創意によるものなのか、
映画などの典拠があるのかは定かでありません。

原作にこめられていた
行き場ない強い負の感情が多少弱められて、
その分読みやすく仕上がっているように感じました。

個人的には、
マイナスの感情が立ち込める
暗い雰囲気の悲しいお話なので、
積極的に読みたいとは思いません。

ただし、
人から愛されることを拒絶された若者が抱える
心の闇、苦しさ、切なさ、醜さを、深く掘り下げた作品として、
それなりに読むべきところはあると思いました。

落ち込んでいる時だと
自分も一緒に引きずり込まれそうな
強い負の力があるので、

少し距離を置いてから、
また忘れたころに読み返そうと思います。


翻訳は、
読みやすさ重視であれば、
芹澤恵(せりざわめぐみ)氏の新潮文庫がお勧めです。


芹澤恵訳
『フランケンシュタイン』
(新潮文庫、2014年12月)

他に手に入れた
以下の翻訳の中では一番滞りなく、
最後まで読み通すことができました。

田内志文訳
『新訳 フランケンシュタイン』
(角川文庫、2015年2月)

小林章夫訳
『フランケンシュタイン』
(光文社古典新訳文庫、2010年10月)

森下弓子訳
『フランケンシュタイン』
(創元推理文庫、1984年2月)

山本政喜訳
『フランケンシュタイン』
(角川文庫、1994年11月)


※通算125冊目。計1,034,702語。

※Wikipediaの「メアリー・シェリー」「フランケンシュタイン」を参照。