2015年11月23日月曜日

【読了】Sir Arthur Conan Doyle, The Lost World (MMR Level 3)

やさしい英語の本、通算119冊目は、

マクミラン・リーダーズの
レベル3(1100語レベル)の6冊目として、

イギリスの小説家
アーサー・コナン・ドイル(1859.5-1930.7)の
『ロスト・ワールド ―失われた世界』を読みました。

著者53歳の時に
『ストランド・マガジン Strand Magazine誌上で
発表され(1912年4-11月)、同年中に刊行された作品です。


Sir Arthur Conan Doyle
The Lost World

〔Macmillan Readers Level 3〕
This retold version by Anne Collins for Macmillan Readers
First published 1995
This edition first published 2005
11,955語

コナン・ドイルといえば、
シャーロック・ホームズの探偵物で有名なので、
最近まで、冒険小説を書いているとは知りませんでした。

イギリスの新聞記者マローンが、
風変わりな動物学者チャレンジャー教授らとともに、

南米の奥地に、
恐竜の生息地を見つけるため
冒険の旅に出る小説です。

恐竜をテーマにした小説の嚆矢として有名なようですが、

アメリカの小説家
マイケル・クライトン(1942.10-2008.11)が、
48歳の時(1990.11)に出版した
小説『ジュラシック・パーク』すら読んでいないので、
お初の恐竜小説ということになります。


やさしい英語で読んでみると、

大人が読んでも
荒唐無稽なものに感じないように、
かなり手堅く作り込まれた小説で、
最後まで楽しみながら読み終えることができました。

ドイルならではの冷静緻密な筆致に、
冒険物ならではの独特の高揚感が加わるので、
個人的にはホームズより読ませる力があるように思いました。


  ***

翻訳は、
菅紘(かんひろし)氏の講談社青い鳥文庫を手に入れて、
読み始めたところです。
わかりやすい訳文ですらすら読み進めます。


菅紘訳
『ロスト・ワールド ―失われた世界』
(講談社青い鳥文庫、新装版、2015年8月)
 ※初出は『失われた世界』(講談社青い鳥文庫、2004年5月)

ほかの翻訳は、
瀧口訳(創元SF文庫)くらいしか知らなかったのですが、
調べてみるとたくさん見つかりました。

まだ網羅していませんが、
ざっと調べた分だけ掲げておきます。

森詠 編訳
『森詠の失われた世界』(講談社、2002年7月)
 ※初出は『失われた世界』(講談社〔痛快世界の冒険文学13〕1998年10月)


高野孝子 訳
『悪魔の棲む台地 ―ロスト・ワールド』
(小学館〔地球人ライブラリー11〕1995年3月)

白木茂 編訳
『恐竜世界の探検』
(あかね書房〔少年少女世界SF文学全集3〕1971年7月)


瀧口直太朗 訳
『失われた世界 ―チャレンジャー教授シリーズ』
(創元SF文庫、1970年9月)

加島祥造 訳
『失われた世界 ―ロスト・ワールド』
(ハヤカワ文庫、1996年8月)
 ※初出は早川書房〔世界SF全集3〕1970年8月。

久米穣訳
『ロスト・ワールド』
(岩波書店〔冒険ファンタジー名作選1〕2003年10月)
 ※初出は『恐竜の世界』(岩崎書店〔SF世界の名作13〕1967年3月)

永井淳 訳
『失われた世界』
(角川文庫、1967年1月)

新庄哲夫 訳
『ロスト・ワールド』
(早川書房〔ハヤカワ・SF・シリーズ〕1963年5月)

片方善治 訳
『恐竜の足あと』
(岩崎書店〔ドイル冒険・探偵名作全集2〕1960年4月)

大仏次郎 訳
『失われた世界/豪勇ジェラール』
(小山書店〔世界大衆小説全集第1期第1巻〕1954年12月)

面白そうなものは手に入れて、
よりわかりやすい翻訳があれば、
また紹介していきます。


※通算119冊目。計971,571語。

月2冊ほどのペースで、
やさしい英語の本を読み進めて参りましたが、
もう間もなく100万語を超えそうです。

100万語に近づいてみると、
100万語はまだまだ通過点であることが実感できますが、

それなりに力がついて来ていたことも確かで、
高校1、2年生のリーダー程度の英文なら、
日本語を読むのとあまり変わらない感覚で、
読み進められるようになって来ました。

仕事をしながら、
日本語の本も読みながらでは月2、3冊が限度なので、
なかなか先に進みませんが、

自分の好きな本を選んで、
自分のペースで読み進められるからこそ、
4年たっても飽きずに続けられているのだと思います。

恐らく200万語をこえるあたりで
大学入試レベルの英文をすらすら読めるようになって、
簡単な児童小説なら原書のまま読めているのではないかと期待しています。

2015年11月16日月曜日

【読了】三浦綾子著『続 氷点(上・下)』(1970-71年発表)

前作『氷点』に続いて、

北海道旭川市出身の女性作家
三浦綾子(1922.4-1999.10)の
小説『続 氷点』を読み終えました。

『朝日新聞』朝刊
〔1970年5月12日-71年5月10日〕に連載され、
著者49歳の時(1971年5月)に朝日新聞社から刊行された小説です。


三浦綾子著
『続 氷点(上・下)』
(角川文庫、1982年3月、改版、2014年8月)

前作は『朝日新聞』朝刊
〔1964年12月9日-65年11月14日〕に連載され、
著者43歳の時(1965年11月)に朝日新聞社から刊行されていたので、
6年近くのちに書かれた続編ということになります。

今回も読みやすい文章で、
興味深く、最後まで読み終えることができました。

前作が「原罪」をテーマにしていたのに対して、
今回は「ゆるし」をテーマにされていたそうです。

前作で未解決のまま
放置されていた問題に対して、
著者なりの解答を出そうとした結果、

力技でまとめた感じの
若干残念な作品になっていたように思いました。


  ***

特に残念だったのは、
物語の核心的な部分で、

日本軍によるありえないレベルの残虐行為を、
登場人物の一人に自らの原罪として告白させていたところです。

今読めば荒唐無稽にしか感じない内容が、
あたかも事実であったかのように描かれていたので、

物語の最後に来て、読書熱が一気に冷めてしまいました。

三浦氏は歴史の専門家ではなく、
小説家である以上、真実を描く必要はないのですが、

物語のクライマックスで、
正直に、自らの「原罪」を語る場面で、
巧みに虚構の歴史を織り交ぜてくるところは、

作者の政治的な意図が垣間見え、
非常に残念でした。


  ***

1970-71年当時の
三浦氏の歴史認識は、
何によっていたのか興味がわきました。

すぐに思いついたのは、
本多勝一氏の『中国の旅』です。


本多勝一著
『中国の旅』
(朝日新聞社、1972年1月)

同書は
『朝日新聞』の1971年8月から12月まで連載され、
1972年1月に朝日新聞社から刊行された作品です。

三浦氏は、
『中国の旅』の内容を歴史的事実と認識し、
自著に利用したのではないかと思ったのですが、

『続 氷点』は
1970年5月から翌年5月まで
『朝日新聞』に連載されたものなので、

1971年8月から発表された『中国の旅』を、
三浦氏が参照することは不可能でした。


それでは三浦氏は、
何を読んだのだろうと思い、
もう少し調べたところ、

『中国の旅』の15年前、
1957年3月に同じような書物として、

三光―日本人の中国における戦争犯罪の告白 (1957年) (カッパ・ブックス)

神吉晴夫編
『三光 ―日本人の中国における戦争犯罪の告白』
(光文社 カッパ・ブックス、1957年3月)

が出ていたことに気がつきました。

中国の戦犯収容所に収容された
日本人戦犯の手記という名目で刊行されたものなので、

三浦氏は『三光』の記述を事実と判断し、

『続 氷点』にみえる
日本軍の残虐行為の記述に反映された可能性が高いように思われます。

今読めば、
政治的な情報操作の行われていたことが明白な書物なのですが、

当時は、
それを事実と信じることこそが、
善良な日本人のあり方だ考えたのかもしれません。

しかし、
原罪とゆるしをテーマとする小説を執筆する中で、

冷静に考えれば
史実でないことが明らかな、
人道にもとる残虐行為を私は犯しました!

と嘘の告白をさせ、
偽りの原罪を背負わせてしまうことは、
物語の構成上、かなり安易であるように思われました。

2015年11月9日月曜日

【読了】Alex Raynham, The Human Body (OBW Stage 3)

やさしい英語の本、通算118冊目は、

一つ前のレベルに戻って、
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ3(1000語レベル)の18冊目として、

英語学習者向けに
やさしい英語の本を執筆されている
アレックス・レインハム氏による
生物分野の入門書『人体 The Human Bodyを読みました。


Alex Raynham
The Human Body

〔Oxford Bookworms Stage 3〕
(c) Oxford University Press 2014
10,489語

人間の身体の構造についてのわかりやすい概説書でした。

高校の生物ほどではありませんが、
中学理科のレベルは超えているので、

日本語でふだんあまり目にしない
解剖学の専門用語もいろいろ出てきましたが、

わからない専門用語については、
インターネットで検索をかけながら読み進めました。

それなりに大変でしたが、

科学関係の本だからか、
文章に曖昧なところがなく、
文法的には簡単なレベルだったので、
意外に読みやすかったです。

実学系の本は、
新出単語が多いので、
一つ上のレベルに感じられるのですが、

語彙力を増やすのにはいい機会なので、
時々挑戦していこうと思います。


 ***

この分野の日本語での入門書は、
専門外なのでよくわからないのですが、

今回役に立ったのは、
坂井建雄(さかいたつお)氏監修による
次の1冊です。


坂井建雄(監修)
沢田麻間・サイドランチ(マンガ)
『マンガでわかる人体のしくみ』
(池田書店、2013年7月)

高校を出た後、専門学校などで
看護系の勉強をする人向けの入門書

といった趣なので、
レベルは少し難しめですが、

読み方のわからない
臓器の各部位の名称など、
ほとんどの専門用語に
ふりがなを付けてあるので、
専門外の私にも使いやすかったです。


※通算118冊目。計959,616語。

2015年11月2日月曜日

【読了】ジャック・ロンドン著(辻井栄滋訳)『野性の呼び声』(2001年翻訳)

アメリカ合衆国の作家
ジャック・ロンドン(1876.1-1916.11)の
小説『野性の呼び声』を読みました。

著者27歳の時(1903.7)に出版された作品です。


ジャック・ロンドン著
/辻井栄滋(つじいえいじ)訳
『野性の呼び声』
(現代教養文庫、2001年12月)
 ※辻井訳『決定版 ジャック・ロンドン選集1 野性の呼び声・どん底の人々』(本の友社、2005年10月)に再録。

やさしい英語では、

2012年12月に
ペンギン・アクティブ・リーディングの
レベル2(600語レベル)

今年9月に
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ3(1000語レベル)

で、2つの『野性の呼び声』を読み終えていました。

そろそろ翻訳をと思い、
辻井訳のほかにも、

深町眞理子(ふかまちまりこ)訳
『野性の呼び声』
(光文社古典新訳文庫、2007年9月)

海保眞夫(かいほまさお)訳
『荒野の呼び声』
(岩波文庫、1997年12月)

の2つを手に入れましたが、

文章に勢いがあり、
一番読みやすかったのは辻井訳でした。

他にもたくさん翻訳は出ていますが、
どれも50年以上昔のものです。

目についたもののみ挙げておきます。

瀧口直太朗 訳
『野性の呼び声』
(旺文社文庫、1968年11月)

大石真 訳
『野性の呼び声』
(新潮文庫、1959年6月)

阿部知二 訳
『荒野の呼び声』
(偕成社文庫、1977年2月)
 ※初出は『世界少年少女文学全集36 アメリカ編6』(創元社、1955年12月)。
 ※『世界大ロマン全集28 白い牙・荒野の呼び声』(東京創元社、1957年10月)にも再録。

 三浦新市 訳
『野性の呼び声』
(河出文庫、1955年9月)

岩田欣三 訳
『荒野の呼び声』
(岩波文庫、1954年12月)

山本政喜 訳
『荒野の呼び声』
(角川文庫、1953年4月)

堺利彦 訳
『野性の呼び声』
(叢文閣、1928年4月)


動物が主人公になる小説は
普段それほど読み慣れていないので、

最初は何となく違和感があったのですが、

やさしい英語で読んで、
あらすじを知った上での挑戦だったので、

楽しみながら読み進めることができました。

方向性は違うのですが、
アンナ・シュウエルの『黒馬物語』
と同じような記述の濃密さを感じました。

正直なところ、
まだまだ原書で読みたいほど好きとはいえませんが、

それほど長い作品でもありませんし、
少し時間を置いてから、また読んでみたいと思います。