2012年10月30日火曜日

【読了】ルブラン 『奇巌城』(南洋一郎 編訳)

フランスの小説家
モーリス・ルブラン(1864-1941)の
小説『奇巌城』(1909年)を読みました。

先日の『怪人二十面相』に続き、
ポプラ社のレトロな表紙にひかれて、
手にとってみました。


モーリス・ルブラン原作/南洋一郎 文
『怪盗ルパン全集 奇巌城』
(ポプラ文庫、平成22年1月)

中高生のころ、
ホームズに多少はまっていたからか、
ルパンの方はあまり興味がわかず、
これまで読む機会はありませんでした。

『奇巌城』はルブラン45歳のとき(1909年)に発表された作品だそうです。

コナン・ドイルほど緻密に、
理で詰めてあるわけではありませんが、
その分、感情に訴える要素が多く、
先へ先へと楽しんで読み終えることができました。

ただしホームズのぞんざいな扱われ方に、
ホームズに熱を上げている頃であれば、
怒り心頭だったかもしれません。

まあ今なら、別個の小説として楽しめそうです。


文章は、
江戸川乱歩よりは流れが悪く感じましたが、

翻訳であることを考えれば、
かなり読みやすい日本語になっていると思います。

余暇の楽しみに、
一冊ずつ、時間をみつけて読んでいきましょうか。


 ***

せっかくなので、
ポプラ社から出版された
南洋一郎(1893-1980)編訳のルパンについて少し調べました。

何度も再刊されているので、
なんだか良くわからない状況でした。


今回手にした
レトロな表紙の「怪盗ルパン全集」は、

 昭和33~36年(第 1-15巻)
 昭和46・47年(第16-25巻)
 昭和49~55年(第26-30巻)

と20年の長きにわたって刊行され、
全30巻で完結しています。
(翻訳者の南氏は昭和55年に亡くなっています。)

しかし時代を反映してか、
ルブラン原作の非ルパン作品や、
南洋一郎による模倣作(第13巻)、
ボアロー&ナルスジャックによる模倣作(第26-30巻)も含めた「全集」であったため、

ルブラン原作のルパンを再現するという意味では、
少なからず問題がありました。


そこで平成11・12年にかけて、
ルブラン原作のルパン作品だけを選び、
出版順に配列しなおした「新訂/シリーズ怪盗ルパン」
全20巻が刊刊されました。

ひらがなが漢字に変わったり、
漢字がひらがなに変わったりしている所もありますが、
文章はおおむねそのままで、ルビも多いです。

挿絵が変わっている点、
大きく印象が異なりますが、

細かな異同を気にしなければ、
今はこちらの新訂版で読むのが良いのかもしれません。



つまり新訂版も出ている中で、
平成21・22年に、昔の「怪盗ルパン全集」に遡って、
ポプラ文庫から復刊されたことになります。

確かに、
ルパンの受容史を考えると、
南氏による「怪盗ルパン全集」全30巻の資料的価値は
少なくないでしょう。

おどろおどろしい印象的な表紙と挿画にも一定の需要があると思います。


ただし今のところ、
全30巻中の第15巻まで、
しかも南氏の模倣作とみられる第13巻は復刊されていないので、
計14巻が復刊されていることになります。

資料的な価値を考えれば、
むしろ模倣作のほうを復刊してほしいなと思うのですが、
売れ行きしだいなのかもしれません。



◯怪盗ルパン全集(ルブラン原作/南洋一郎 文)全30巻
※第26-30巻は、ボアローとナルスジャックの共作による模倣作。

『怪盗ルパン全集1 奇巌城』
(ポプラ社、昭和33年5月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録。
 ポプラ文庫、平成21年12月に再録)
  →『新訂シリーズ4 奇巌城』(平成11年12月)

『怪盗ルパン全集2 怪盗紳士』
(ポプラ社、昭和33年6月。ポプラ社文庫、昭和63年4月に再録。
 ポプラ文庫、平成21年12月に再録)
  →『新訂/シリーズ1 怪盗紳士』(平成11年11月)

『怪盗ルパン全集3 8・1・3の謎』
(ポプラ社、昭和33年7月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録。
 ポプラ文庫、平成21年12月に再録)
  →『新訂/シリーズ6 813の謎』(平成11年12月)

『怪盗ルパン全集4 古塔の地下牢』
(ポプラ社、昭和33年8月。ポプラ社文庫、昭和63年6月に再録。
 ポプラ文庫、平成21年12月に再録)
  →『新訂/シリーズ7 古塔の地下牢』(平成12年1月)

『怪盗ルパン全集5 八つの犯罪』
(ポプラ社、昭和33年10月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年3月に再録)
  →『新訂/シリーズ13 八つの犯罪』(平成12年2月)

『怪盗ルパン全集6 黄金三角』
(ポプラ社、昭和33年12月。ポプラ社文庫、昭和63年7月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年3月に再録)
  →『新訂/シリーズ10 黄金三角』(平成12年1月)

『怪盗ルパン全集7 怪奇な家』
(ポプラ社、昭和33年12月。ポプラ社文庫、昭和63年6月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年3月に再録)
  →『新訂/シリーズ17 怪奇な家』(平成12年3月)

『怪盗ルパン全集8 青い目の少女』
(ポプラ社、昭和34年3月。ポプラ社文庫、昭和63年4月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年3月に『緑の目の少女』と改題し再録)
  →『新訂/シリーズ15 緑の目の少女』(平成12年2月)

『怪盗ルパン全集9 怪盗対名探偵』
(ポプラ社、昭和34年5月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年4月に再録)
  →『新訂/シリーズ3 ルパン対ホームズ』(平成11年11月)

『怪盗ルパン全集10 七つの秘密』
(ポプラ社、昭和34年6月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年4月に再録)
  →『新訂/シリーズ8 七つの秘密』(平成12年1月)

『怪盗ルパン全集11 三十棺桶島』
(ポプラ社、昭和34年11月。ポプラ社文庫、昭和63年5月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年4月に再録)
  →『新訂/シリーズ11 三十棺桶島』(平成12年2月)

『怪盗ルパン全集12 虎の牙』
(ポプラ社、昭和35年1月。ポプラ社文庫、昭和63年7月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年7月に再録)
  →『新訂/シリーズ12 虎の牙』(平成12年2月)

『怪盗ルパン全集13 ピラミッドの秘密』
(ポプラ社、昭和36年10月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録。)
  ※南氏による模倣作と推定されている。

『怪盗ルパン全集14 消えた宝冠』
(ポプラ社、昭和36年10月。ポプラ社文庫、昭和63年8月に再録。
 ポプラ文庫、平成22年7月に再録)
  →『新訂/シリーズ5 消えた宝冠』(平成11年12月)

『怪盗ルパン全集15 魔女とルパン』
(ポプラ社、昭和36年11月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録)
 ポプラ文庫、平成22年7月に再録)
  →『新訂/シリーズ14 魔女とルパン』(平成12年2月)

『怪盗ルパン全集16 魔人と海賊王』
(ポプラ社、昭和46年8月)※ルブラン原作の非ルパン作品。

『怪盗ルパン全集17 ルパンの大冒険』
(ポプラ社、昭和46年9月。ポプラ社文庫、昭和63年8月に再録)
  →『新訂/シリーズ19 ルパンの大冒険』(平成12年3月)

『怪盗ルパン全集18 まぼろしの怪盗』
(ポプラ社、昭和46年9月)

『怪盗ルパン全集19 ルパンの大失敗』
(ポプラ社、昭和46年10月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録)
  →『新訂/シリーズ2 ルパンの大失敗』(平成11年11月)

『怪盗ルパン全集20 妖魔と女探偵』
(ポプラ社、昭和46年11月)※ルブラン原作の非ルパン作品。

『怪盗ルパン全集21 ルパンの名探偵』
(ポプラ社、昭和47年4月。ポプラ社文庫、昭和63年9月に再録)
  →『新訂/シリーズ16 ルパンの名探偵』(平成12年3月)

『怪盗ルパン全集22 悪魔の赤い輪』
(ポプラ社、昭和47年5月)※ルブラン原作の非ルパン作品

『怪盗ルパン全集23 ルパンと怪人』
(ポプラ社、昭和47年6月)
  →『新訂/シリーズ18 ルパンと怪人』(平成12年3月)

『怪盗ルパン全集24 ルパン最後の冒険』
(ポプラ社、昭和47年8月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録)
  →『新訂/シリーズ20 ルパンの最後の冒険』(平成12年3月)

『怪盗ルパン全集25 ルパンの大作戦』
(ポプラ社、昭和47年11月。ポプラ社文庫、昭和51年11月に再録)
  →『新訂/シリーズ9 ルパンの大作戦』(平成12年1月)

◇ボアロー&ナルスジャック原作/南洋一郎 文
『怪盗ルパン全集26 悪魔のダイヤ』(ポプラ社、昭和49年3月)
『怪盗ルパン全集27 ルパンと時限爆弾』(ポプラ社、昭和49年12月)
『怪盗ルパン全集28 ルパン二つの顔』(ポプラ社、昭和51年4月)
『怪盗ルパン全集29 ルパンと殺人魔』(ポプラ社、昭和54年7月)
『怪盗ルパン全集30 ルパン危機一髪』(ポプラ社、昭和55年3月)


◯新訂/シリーズ怪盗ルパン(ルブラン原作/南洋一郎 文)全20巻

『新訂/シリーズ怪盗ルパン1 怪盗紳士』
(ポプラ社、平成11年11月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集2 怪盗紳士』(昭和33年6月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン2 ルパンの大失敗』
(ポプラ社、平成11年11月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集19 ルパンの大失敗』(昭和46年10月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン3 ルパン対ホームズ』
(ポプラ社、平成11年11月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集9 怪盗対名探偵』(昭和34年5月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン4 奇巌城』
(ポプラ社、平成11年12月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集1 奇巌城』(昭和33年5月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン5 消えた宝冠』
(ポプラ社、平成11年12月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集14 消えた宝冠』(昭和36年10月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン6 813の謎』
(ポプラ社、平成11年12月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集3 8・1・3の謎』(昭和33年7月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン7 古塔の地下牢』
(ポプラ社、平成12年1月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集4 古塔の地下牢』(昭和33年8月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン8 七つの秘密』
(ポプラ社、平成12年1月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集10 七つの秘密』(昭和34年6月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン9 ルパンの大作戦』
(ポプラ社、平成12年1月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集25 ルパンの大作戦』(昭和47年11月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン10 黄金三角』
(ポプラ社、平成12年1月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集6 黄金三角』(昭和33年12月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン11 三十棺桶島』
(ポプラ社、平成12年2月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集11 三十棺桶島』(昭和34年11月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン12 虎の牙』
(ポプラ社、平成12年2月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集12 虎の牙』(昭和35年1月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン13 八つの犯罪』
(ポプラ社、平成12年2月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集5 八つの犯罪』(昭和33年10月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン14 魔女とルパン』
(ポプラ社、平成12年2月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集15 魔女とルパン』(昭和36年11月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン15 緑の目の少女』
(ポプラ社、平成12年2月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集8 青い目の少女』(昭和34年3月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン16 ルパンの名探偵』
(ポプラ社、平成12年3月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集21 ルパンの名探偵』(昭和47年4月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン17 怪奇な家』
(ポプラ社、平成12年3月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集7 怪奇な家』(昭和33年12月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン18 ルパンと怪人』
(ポプラ社、平成12年3月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集23 ルパンと怪人』(昭和47年6月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン19 ルパンの大冒険』
(ポプラ社、平成12年3月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集17 ルパンの大冒険』(昭和46年9月)

『新訂/シリーズ怪盗ルパン20 ルパンの最後の冒険』
(ポプラ社、平成12年3月。ポプラ社 文庫版、平成17年2月に再録)
  →『全集24 ルパン最後の冒険』(昭和47年8月)


※wikipedia の「モーリス・ルブラン」「アルセーヌ・ルパン」
        「コナン・ドイル」「シャーロック・ホームズシリーズ」
        「南洋一郎」の各項目を参照。

※ポプラ社のHP〈http://www.poplar.co.jp/〉を参照しました。

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