2012年5月31日木曜日

【読了】James Fenimore Cooper, The Last of the Mohicans (MMR Beginner)

やさしい英語の本、

再び Macmillan Readers の Beginner Lever(16冊目)に戻って、

アメリカの小説家ジェイムズ・フェニモア・クーパーの
歴史小説『モヒカン族の最後』を読みました。

一つ前のレベルに戻ると、
やはりまだまだこちらの方が、
すらすら読めることを実感できました。


James Fenimore Cooper
The Last of the Mohicans

Retold by Jhon Escott
 (Macmillan Readers Beginner)
2002年刊(6,514語)


クーパー(1789生 1851没)
の名はよく知らなかったのですが、

本書を原作にした映画『ラスト・オブ・モヒカン』が
1992年に公開されておりますので、
作品の名前はよく知っておりました。

公開当時、
映画館で一度観た記憶もあるのですが、
具体的なストーリーはまったく忘れておりました。


少し調べてみると、
本書は5部からなる大作

『レザーストッキング物語 (革脚絆物語 The Leather Stoching Tales)』

のうちの1冊であり、全体は、

『鹿殺し (The Deerslayer)』(1841年刊)
『モヒカン族の最後』(1826)
『道を開く者 (The Pathfinder)』(1840)
『開拓者 (The Pioneers)』(1823)
『大草原 (The Prairie)』(1827)

の5冊からなるそうです。
(犬飼和雄 「訳者あとがき」参照)


邦訳は、

犬飼和雄 訳『モヒカン族の最後〈上・下〉』
(ハヤカワ文庫、平成5年2月)

足立康 訳『モヒカン族の最後』
(福音館古典童話シリーズ30、平成5年3月)

がすぐに手に入るようです。とりあえず、
古本でハヤカワ文庫本を購入しました。


他に『開拓者』の邦訳が
岩波文庫から刊行されておりますが、
残り3冊は邦訳されていないようです。


リトールド版で読む限りでは、

次々と場面が転換して、
最後まで飽きることなく読み進められましたが、

原著は読みにくく、クセのある英文で知られているそうです。


本書『モヒカン族の最後』は、
1755年から1763年にかけて北米大陸で起きた
英仏間の植民地戦争に題材をとった物語です。

当時ヨーロッパでは、

「プロセイン・イギリスと、
オーストリア・ロシア・フランス・スウェーデン・スペインなどの
ヨーロッパ諸国との間で」

七年戦争(1756~63)と呼ばれる戦争が行われていました。
これに呼応して北米大陸でも、英仏間で、

「先住民(インディアン)と同盟を結んだフランス軍を相手に、
イギリス人が戦った」

フレンチ・インディアン戦争と呼ばれる
植民地戦争が行われていました。

(C・チェスタトン著/中山理 訳『アメリカ史の真実』43頁参照。)

本書はこのフレンチ・インディアン戦争のさなか、
1757年の出来事として描かれております。


原著は文章に若干の問題があるのかもしれませんが、

リトールド版の方は軽めの冒険小説として
それなりに楽しめましたので、

同じシリーズから出ている続編

The Pathfinder(探検者)

も近々読んでみようと思います。


※計21冊 計178,961語。

2012年5月27日日曜日

【読了】中丸美繪 『オーケストラ、それは我なり―朝比奈隆、四つの試練』


中丸美繪 著
『オーケストラ、それは我なり―朝比奈隆、四つの試練』
(中公文庫、平成24年4月。初出は平成20年9月)


指揮者朝比奈隆(明治41年〔1908〕生―平成13年〔2001〕没)の
評伝を読みました。

朝比奈氏の本格的な評伝は、今のところこの1冊のみです。


単行本で出たときに買いそびれていたので、
いずれ古本で手に入れようと思っていたのですが、

4月に中公文庫から出ることになったので、
早速手に入れて読んでみました。


私が朝比奈隆氏のことを知ったのは、
宇野功芳氏の著書を通じてでした。

大阪にコンサート詣でをかけられるほど、
金銭的な余裕もありませんでしたので、

1990年代に次々と発売された
大阪フィルとの新譜を楽しみながら聴いていくことで、
朝比奈ファンの一人となりました。

ですから、
1980年代以前のことは詳しく知る由もなく、
度々復刻される録音を聴いたりしながら、
少しずつ認識を深める程度でした。


中丸美繪(なかまるよしえ)氏による本書は、
生い立ちから、晩年の豊かな実りの時期をむかえるまでの、
朝比奈氏が歩いて来た93年に及ぶ長い道すじを、
ていねいに一つ一つ、絶妙なバランスで辿っており、
たいへん勉強になりました。


音楽的なことだけでなく、
朝比奈氏の人間的な側面について、
長所とともに、欠点にもきちんと触れている点がありがたく、

朝比奈氏の人物像について、
これまでより深く理解することができました。


プロのオーケストラを立ち上げ、
常にゆるやかな上昇のカーブを描きながら、
亡くなるまで54年の長きにわたり、
シェフとして運営し続けることの困難さは、
言語に絶するものがあったはずで、

明治人の頑固なまでの生き様に、
強い感銘を受けました。


中丸美繪氏の著書、初めて読みましたが、
先へ先へと読み進ませられる勢いのある文章で、
楽しく読み終えることができました。

書名のみ知っていた処女作
『嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯』
もぜひ読んでみようと思います。

2012年5月23日水曜日

【読了】森繁和 『参謀―落合監督を支えた右腕の「見守る力」』


森繁和 著
『参謀 ― 落合監督を支えた右腕の「見守る力」』
(講談社、平成24年4月)


昨年11月に発売された
落合博満氏(ドラゴンズ戦監督)の『采配』に続き、

森繁和氏(ドラゴンズ前ヘッドコーチ)の
『参謀』が4月に発売されました。


常勝軍団の参謀役にいた人物が、
実際に何を考えて、監督にどう仕え、
選手に対してどのようにふるまっていたのか、

ご本人から話をうかがう機会はまずないことなので、
ゴールデンウィーク中に、興味深く読了させていただきました。


プロ野球の球団のような大きな組織では、
監督一人でがんばろうとしても限界があるので、

よい参謀役になる方を
自分のそばに置けるかどうかが、
決定的に重要なんだなあ、と実感することができました。


本書を読んで、森繁和氏は、

一般社会で生きていく上での「常識」の引き出しが、
人並外れて豊富な方だと思いました。

一つ一つは常識的なことでも、
選手一人ひとりへの繊細な「目配り、気配り」が
驚くほどに行き届いていて、

自分にはとても真似できないレベルだと思いました。


こうした素質は、
落合前監督にはないものなので、

かなり前から、
自分がもし監督をするときには、と
森氏の実力に目を留めていた落合氏の眼力にも感心しました。


自分のことを理解してくれて、
しかも自分にない性質をよく補ってくれる人物との出会いは、

確かに一生に一度あるかないかのことだと思うので、
人との出会いは大切にしなければならない、

しかしまずは自分を磨いて、
自らがそれなりの人物になる努力を重ねなければならない、
と思いました。

大変勉強になる一冊でした。

2012年5月21日月曜日

【読了】Conan Doyle, Silver Blaze and Other Stories (MMR Elementary)

Macmillan Readers の Elementary level4冊目は、
イギリスの小説家アーサー・コナン・ドイル(1859-1930)が著した、
名探偵シャーロック・ホームズの短編集を読みました。


Sir Arthur Conan Doyle
Silver Blaze and Other Stories

Retold by Anne Collins
(MAacmillan Readers Elementary)
1987年刊(11,800語)


収録されているのは、
 The Blue Carbuncle(青いガーネット)
 Silver Blaze(白銀号事件)
 The Six Napoleons(六つのナポレオン)
の3作品です。

シャーロック・ホームズは、
ずいぶん昔にまとめて読んだ記憶があるのですが、
もうほとんど忘れていたので、

懐かしい新潮文庫を買い直して調べてみると、

それぞれ第1~第3短編集から
1作ずつ選んで収録していることがわかりました。

 第一短編集『シャーロック・ホームズの冒険』
「青いガーネット」(1892年1月)
 第二短編集『シャーロック・ホームズの思い出』
「白銀号事件」(1892年12月)
 第三短編集『シャーロック・ホームズの帰還』
「六つのナポレオン」(1904年5月)

実際に読んでみると、
「青いガーネット」と「白銀号事件」は
すんなり読み通すことができました。

「六つのナポレオン」は、
ナポレオン像がいろいろな人の手に渡る関係で、
人名がいろいろ出て来るため、
話の筋を追うのに少し苦労しました。

英語の人名は、たくさん出てくると、
まだまだ日本語ほどには見分けがつかなくなるようです。


原文よりはるかに
やさしく書き直しているわけですが、
シャーロック・ホームズを英語で読める、
というのはなんだかうれしいものです。


この機会に買い直した邦訳は、

コナン・ドイル著/延原謙 訳
『シャーロック・ホームズの冒険』
(新潮文庫、昭和28年3月・平成23年4月、改版)
『シャーロック・ホームズの思い出』
(新潮文庫、昭和28年3月。平成22年7月、改版)
『シャーロック・ホームズの帰還』
(新潮文庫、昭和28年4月。平成22年1月、改版)

です。昔は活字が小さく、
読みにくかった記憶があるのですが、
活字も大きく読みやすくなりました。

訳もこなれており、
ほどほどの格調高さのある文章なので、
またまとめて読んでみたくなりました。

なお、ページ数の都合上、
それぞれ数篇ずつ割愛されていますが、
割愛された分は、まとめて
『シャーロック・ホームズの叡智』(新潮文庫)
として収録されています。


※計20冊 計172,447語。


2012年5月9日水曜日

【読了】岡崎久彦 『重光・東郷とその時代』


岡崎久彦 『重光・東郷とその時代』
(PHP文庫、平成15年9月。初出は平成13年6月)

岡崎久彦氏の日本政治外交史3部作、
4冊目を読み終わりました。

4・5冊目は、
昭和5年(1930)生まれの岡崎氏にとって
同時代史に当たります。

岡崎氏自らが記憶してきた事柄を、
学会の通説と折り合いをつけながら、
わかりやすく書き下ろしてあります。


昭和一ケタ世代の方々の記憶をたどり直すのは、
それ自体興味深いものがありますが、

記憶にひきずられるせいか、
時代全体を見通す眼に、
若干の甘さがあるように感じられました。


穏当な通史として
相当成功していることは確かですが、

民族系の方々のもつ歴史観の限界を
そのまま受け継いでいる点は、
注意する必要があると思います。


例えば、
甚大な被害を出すことが必定な中、
無謀な戦争に突入して行った政治的な責任について、

左翼の定式にしたがう必要は全くないのですが、

この叙述では、
一体誰にどのような責任があったのか
はっきりさせていないことが不満でした。


中川氏が具体的に責任を追求されていた
米内光政、山本五十六、近衛文麿についても、
若干の失政を指摘しつつ、

民族系の通説通り、
戦争を防ごうと尽力した人物の一人として描かれており、
それは違和感がありました。

近衛文麿の手記を、
そのまま史実として扱っているのも問題でしょう。


ゾルゲ事件についても触れているものの、
スパイによる日本国内における共産主義の工作が、
日本にどのような悪影響を与えたのか
という視点はほぼ欠落しており、

尾崎秀実が
近衛文麿のブレーンであったことすら
触れていないのも違和感がありました。


こうしたいくつかの問題はあるのですが、

岡崎氏の世代が書かれた
一般国民向けの概説として、

これをこえるものはほとんどないことも確かです。


さて最後の第5巻、
楽しんで読み進めたいと思います。