2011年12月20日火曜日

【読了】中川八洋 『民主党大不況』



中川八洋 著
『民主党大不況―ハイパー・インフレと大増税の到来』
(清流出版、平成22年7月)


『地政学の論理』に続いて、
「積ん読」状態だった一書を読み終えました。
もう少し早く、読むべきだったと痛感しました。

この書名は、
本書の内容の一部しか表しておりません。


本書は、

1991年末にソ連邦が崩壊して以来、
日本で着々と進められてきた「政治改革=共産革命」の現実を、
政策ごとに6つに分類し、個別かつ総合的に批判を加えた書物です。


1990年代から20年かけて
日本で進められている「共産革命」的な政策を、
次の6つに分類されています(305~307頁)。

A、マルクス/エンゲルス/レーニンの
  家族解体を実践する革命

   ①「夫婦別姓」→民法改悪
   ②「子育て支援」→少子化社会対策基本法(2003)
           /次世代育成支援対策推進法(2003)
           /子ども手当の支給/保育園の聖性化

B、子どもの人格を
  “共産主義的な人間”に改造する革命

   ① ジェンダー・フリー教育
   ② 性教育

C、共産革命にとって最大の障害である
  日本の伝統と慣習を全面的に破壊する革命

   ①男女共同参画社会基本法(1999)
   ②女系天皇への皇室典範の改悪

D、自由社会の生命で根幹たる
  〈法の支配〉を破壊する革命

   ①裁判員法(2004)

E、性道徳の剥奪による、
  日本人の動物化改造

   ①女子中高生への売春奨励
    →「援助交際」の正当化と奨励

F、日本人から勤勉の倫理を剥奪する、
  日本人への怠惰性の注入とその能力の劣化促進

   ①「ゆとり教育」
   ②国民祝祭日の大バーゲンとハッピー・マンデーの導入



こうして書き並べてみると、
ヨーロッパでの冷戦の集結を境にして、
むしろ日本では、一気に共産主義(全体主義)を志向する政策が
推し進められてきたことがわかります。

そしてこれらの政策は、大部分、
自民党の政権下で推進されたものですから、
本書は、自民党がこの20年間進めてきた政策への、
根本的な批判にもなっています。

一つ一つの政策への批判はこれまでも色々と出されていますが、

すべてを総合的に取り上げて、1990年代からの、
日本における「共産革命」の大きな流れをまとめられたことは、
非常に有用だと思いました。


何しろソ連邦の崩壊以降、
真正面から、共産革命を是とする政策が掲げられることは
ほとんどなくなりましたので、

個々の政策の内容までよく理解しないと、
知らず知らずのうちに、日本の歴史と伝統を破壊する方向へ
協力してしまいかねない現状になっております。


ソ連邦の崩壊に合わせて、
わが国の極左の面々は、まったく職を追われることもなく、
また、転向を宣言することもありませんでした。

むしろ言葉の表面のみを新しくして、
「政治改革」の名のもとに、
一貫して「共産革命」を推進してきたことを、
よく知る必要があるでしょう。

本書では、保守主義の立場から、
具体的な政策提言もされており、
大変勉強になりました。


とくにイギリスの大政治家マーガレット・サッチャーが、
1980年代に、保守主義の立場から「脱・福祉国家」の政策を実行し、
どのように「英国病」を克服していったのかを解説した一章は、
とても興味深かったです。

そういえば、
今の病んだ日本社会への処方箋として、
サッチャーさんが行った政治に学ぶ必要は、
ものすごくあると思うのですが、
そうした観点からの論考は、最近ほとんど見かけませんでした。


人口が減り続けている以上、今すぐにでも、
福祉政策を大幅に縮小すべきことは明白ですが、

一度はじめた福祉政策を廃止することは、
よほど大きな志を持った政治家と、
それを支持する国民がいないと難しいでしょう。

恐らくまだもうしばらくは、
限界まで福祉政策を押し進め、
財政が実際に破綻したのを目の当たりにして、
はじめて福祉政策の放棄を選択しうるのでしょう。


もう一つ、
日本には中選挙区制が合っているとの指摘。
確かにその通りだと思いました。

イギリスのように、
保守主義の基盤が確固として存在している場合は、
2大政党が政権交代を行なっても、国の基盤が揺らぐことはないでしょう。

しかし日本の場合、
自民党でさえ、保守主義とはいいがたい状況で、
まして民主党となると、全体主義への志向が顕著な政党です。

この2党で政権交代を行った場合、
国の基盤が揺らいでしまい、日本にとって何もメリットはない、
と思うようになりました。

これももう少し時間がかかるでしょうが、
小選挙区制のデメリットについて、そろそろ
本格的に議論しうる段階に来ているようにも思いました。

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