2011年12月17日土曜日

【読了】田中英道 『「写楽」問題は終わっていない』



田中英道『「写楽」問題は終わっていない』
(祥伝社、平成23年12月)



田中英道さんの著書は、
『日本美術全史』(講談社、平成7年6月)以来のお付き合いです。

もともとは、西洋美術史が専門の方です。
西洋美術史でふつうに行なわれている研究方法を、
日本美術に当てはめたらどうなるか、という観点から、
たいへん興味深い研究成果を、数多く発表されています。

残念なのは、
西洋美術史の研究方法と、
日本美術史の研究方法に大きな溝があるからか、

また、田中さんの結論の多くが、
日本美術史の学会への批判にもなっているからか、

その説の多くが、
日本では無視に近い状況になっていることです。

そうした中で、
自説を著書にまとめて発表される
一貫した姿勢には日ごろから敬服しております。

田中氏は、10年程前に、
『実証 写楽は北斎である―西洋美術史の手法が解き明かした真実』
(祥伝社、平成12年8月)

を出版され、写楽は北斎であると主張されました。



過去の諸説をしっかり踏まえた上で、
説得力に富んだ論証を展開されており、たいへん感銘を受けました。

今回の著書は、
その後の研究動向を踏まえつつ、
改めて「写楽」=「北斎」説を主張されています。

前著のダイジェスト版としての役割も果たしているので、
こちらだけ読んでも、論旨は理解できると思います。

私は今のところ、
学説としてもっとも整合性の取れているのは、
田中説だと思っておりますが、

今後、田中説への本格的な批判が出てきたら
議論が活発化してとても面白いと思います。

学会が閉鎖的なのは、
日本に限らずあるものでしょうから、
これは仕方のないことなのかもしれませんが、
無視してしまうのはもったいないことだと思います。

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