2011年12月22日木曜日

【読了】Jane Austen, Northanger Abbey (MMR Beginner)

やさしい英語の本、

MMRのシリーズ12冊目は

イギリスの小説家ジェイン・オースティン
(1775年12月16日生-1817年7月18日没)の
小説『ノーサンガー・アビー』を読みました。



Jane Austen
Northanger Abbey

Retold by Florence Bell
(Macnillan Readers Beginner Lever)

1997年刊(7,337語)


オースティンについては、
『高慢と偏見』や『エマ』の書名のみ知っていましたが、

実際に読んだことがなかったので、
今回読んだ本の著者が、そのオースティンであったとは、
後から気がつきました。

『ノーサンガー・アビー』の書名は初めて知りました。

すぐ手に入る翻訳としては、

中野康司 訳(ちくま文庫、平成21年9月)

がありますが、まだ手に入れていません。


読みやすい英文で、
すらすら読み終えることができました。

内容はイギリスの上流階級の恋のお話し。

オースティン独特のおもしろさは、
リトールド版では伝わりにくいように思いました。

調べてみると、
かなり人気のある小説家のようなので、
いずれ翻訳で読んでみようと思います。


※計12冊 97,771語。

2011年12月20日火曜日

【読了】中川八洋 『民主党大不況』



中川八洋 著
『民主党大不況―ハイパー・インフレと大増税の到来』
(清流出版、平成22年7月)


『地政学の論理』に続いて、
「積ん読」状態だった一書を読み終えました。
もう少し早く、読むべきだったと痛感しました。

この書名は、
本書の内容の一部しか表しておりません。


本書は、

1991年末にソ連邦が崩壊して以来、
日本で着々と進められてきた「政治改革=共産革命」の現実を、
政策ごとに6つに分類し、個別かつ総合的に批判を加えた書物です。


1990年代から20年かけて
日本で進められている「共産革命」的な政策を、
次の6つに分類されています(305~307頁)。

A、マルクス/エンゲルス/レーニンの
  家族解体を実践する革命

   ①「夫婦別姓」→民法改悪
   ②「子育て支援」→少子化社会対策基本法(2003)
           /次世代育成支援対策推進法(2003)
           /子ども手当の支給/保育園の聖性化

B、子どもの人格を
  “共産主義的な人間”に改造する革命

   ① ジェンダー・フリー教育
   ② 性教育

C、共産革命にとって最大の障害である
  日本の伝統と慣習を全面的に破壊する革命

   ①男女共同参画社会基本法(1999)
   ②女系天皇への皇室典範の改悪

D、自由社会の生命で根幹たる
  〈法の支配〉を破壊する革命

   ①裁判員法(2004)

E、性道徳の剥奪による、
  日本人の動物化改造

   ①女子中高生への売春奨励
    →「援助交際」の正当化と奨励

F、日本人から勤勉の倫理を剥奪する、
  日本人への怠惰性の注入とその能力の劣化促進

   ①「ゆとり教育」
   ②国民祝祭日の大バーゲンとハッピー・マンデーの導入



こうして書き並べてみると、
ヨーロッパでの冷戦の集結を境にして、
むしろ日本では、一気に共産主義(全体主義)を志向する政策が
推し進められてきたことがわかります。

そしてこれらの政策は、大部分、
自民党の政権下で推進されたものですから、
本書は、自民党がこの20年間進めてきた政策への、
根本的な批判にもなっています。

一つ一つの政策への批判はこれまでも色々と出されていますが、

すべてを総合的に取り上げて、1990年代からの、
日本における「共産革命」の大きな流れをまとめられたことは、
非常に有用だと思いました。


何しろソ連邦の崩壊以降、
真正面から、共産革命を是とする政策が掲げられることは
ほとんどなくなりましたので、

個々の政策の内容までよく理解しないと、
知らず知らずのうちに、日本の歴史と伝統を破壊する方向へ
協力してしまいかねない現状になっております。


ソ連邦の崩壊に合わせて、
わが国の極左の面々は、まったく職を追われることもなく、
また、転向を宣言することもありませんでした。

むしろ言葉の表面のみを新しくして、
「政治改革」の名のもとに、
一貫して「共産革命」を推進してきたことを、
よく知る必要があるでしょう。

本書では、保守主義の立場から、
具体的な政策提言もされており、
大変勉強になりました。


とくにイギリスの大政治家マーガレット・サッチャーが、
1980年代に、保守主義の立場から「脱・福祉国家」の政策を実行し、
どのように「英国病」を克服していったのかを解説した一章は、
とても興味深かったです。

そういえば、
今の病んだ日本社会への処方箋として、
サッチャーさんが行った政治に学ぶ必要は、
ものすごくあると思うのですが、
そうした観点からの論考は、最近ほとんど見かけませんでした。


人口が減り続けている以上、今すぐにでも、
福祉政策を大幅に縮小すべきことは明白ですが、

一度はじめた福祉政策を廃止することは、
よほど大きな志を持った政治家と、
それを支持する国民がいないと難しいでしょう。

恐らくまだもうしばらくは、
限界まで福祉政策を押し進め、
財政が実際に破綻したのを目の当たりにして、
はじめて福祉政策の放棄を選択しうるのでしょう。


もう一つ、
日本には中選挙区制が合っているとの指摘。
確かにその通りだと思いました。

イギリスのように、
保守主義の基盤が確固として存在している場合は、
2大政党が政権交代を行なっても、国の基盤が揺らぐことはないでしょう。

しかし日本の場合、
自民党でさえ、保守主義とはいいがたい状況で、
まして民主党となると、全体主義への志向が顕著な政党です。

この2党で政権交代を行った場合、
国の基盤が揺らいでしまい、日本にとって何もメリットはない、
と思うようになりました。

これももう少し時間がかかるでしょうが、
小選挙区制のデメリットについて、そろそろ
本格的に議論しうる段階に来ているようにも思いました。

2011年12月17日土曜日

【読了】田中英道 『「写楽」問題は終わっていない』



田中英道『「写楽」問題は終わっていない』
(祥伝社、平成23年12月)



田中英道さんの著書は、
『日本美術全史』(講談社、平成7年6月)以来のお付き合いです。

もともとは、西洋美術史が専門の方です。
西洋美術史でふつうに行なわれている研究方法を、
日本美術に当てはめたらどうなるか、という観点から、
たいへん興味深い研究成果を、数多く発表されています。

残念なのは、
西洋美術史の研究方法と、
日本美術史の研究方法に大きな溝があるからか、

また、田中さんの結論の多くが、
日本美術史の学会への批判にもなっているからか、

その説の多くが、
日本では無視に近い状況になっていることです。

そうした中で、
自説を著書にまとめて発表される
一貫した姿勢には日ごろから敬服しております。

田中氏は、10年程前に、
『実証 写楽は北斎である―西洋美術史の手法が解き明かした真実』
(祥伝社、平成12年8月)

を出版され、写楽は北斎であると主張されました。



過去の諸説をしっかり踏まえた上で、
説得力に富んだ論証を展開されており、たいへん感銘を受けました。

今回の著書は、
その後の研究動向を踏まえつつ、
改めて「写楽」=「北斎」説を主張されています。

前著のダイジェスト版としての役割も果たしているので、
こちらだけ読んでも、論旨は理解できると思います。

私は今のところ、
学説としてもっとも整合性の取れているのは、
田中説だと思っておりますが、

今後、田中説への本格的な批判が出てきたら
議論が活発化してとても面白いと思います。

学会が閉鎖的なのは、
日本に限らずあるものでしょうから、
これは仕方のないことなのかもしれませんが、
無視してしまうのはもったいないことだと思います。

2011年12月14日水曜日

【読了】與謝野晶子 訳 『全訳 源氏物語 一』

『源氏物語』は、一生付き合っていきたい古典の一つです。

はじめて感動をもって読み終えたのは、
大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』でした。
漫画ですが、原作に忠実で、よく出来ていると思います。

今挑戦しているのは、與謝野晶子さんの現代語訳です。
昨日、全5冊のうち1冊を読み終えました。



紫式部 著/與謝野晶子 訳
『全訳 源氏物語 一 新装版』
(角川文庫、平成20年4月)

※「桐壺(きりつぼ)」「帚木(ははきぎ)」
 「空蝉(うつせみ)」「夕顔(ゆうがお)」
 「若紫(わかむらさき)」「末摘花(すえつむはな)」
 「紅葉賀(もみじのが)」「花宴(はなのえん)」
 「葵(あおい)」「榊(さかき)」
 「花散里(はなちるさと)」を収録。


與謝野晶子は、生涯に3度、
『源氏物語』の訳業に取り組まれました。

そのうち1度は関東大震災の影響で、
書きためてあった原稿が消失してしまったため、
出版には至りませんでした。

はじめに世に出たのは、
明治45年2・6月と大正2年8・11月に
金尾文淵堂から全4冊で刊行された『新訳 源氏物語』です。

こちらは3年ほど前に、
『与謝野晶子の源氏物語〈上・中・下〉』
(角川ソフィア文庫、平成20年4月)

として再刊されたときに、読了しています。

前半が抄訳で、後半から詳しくなる、
という一風変わった訳本ですが、

與謝野晶子の文章には
独特の歯切れのよいリズム感があって、
楽しく読み進めることができました。


ただし抄訳で、
わりと急いで完成させたからか、
晶子本人はそれで満足していなかったようで、
晩年にもう一度、訳業に取り組まれました。

昭和13年10月から14年9月にかけて、
金尾文淵堂から全6巻で『新新訳源氏物語』が刊行されました。
こちらは原文に忠実な、全訳になっています。

これも3年前に、
『全訳 源氏物語 一~五』
(角川文庫、平成20年4月)

として再刊されていたのですが、
さすがに続けて読む気力は残っておらず、
しばらく「積ん読」状態になっておりました。


この秋から再び読んでみようと思い、
まずは1冊読み終えました。

やはり与謝野晶子の文章には、
心地よいリズム感と勢いがあって、
ぐいぐいと読み進めることができました。

やはり深い話だな、と感動を新たにしました。
今回はとくに「花散里」の清々しさが心に残りました。


今のところ、
私にとって一番しっくり来るのは、
与謝野晶子の訳本です。

次は第2巻に進みます。

※書誌の情報は、逸見久美氏の巻末解説を参照しました。

2011年12月13日火曜日

【読了】Anthony Hope, The Prisoner of Zenda (MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ11冊目に読んだのは、
イギリスの作家アンソニー・ホープ
(1863年2月9日生-1933年7月8日没)の
冒険小説『ゼンダ城の虜(とりこ)』(1894作)です。


Anthony Hope
The Prisoner of Zenda

Retold by Stephen Colbourn
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1998年刊(9,567語)


冒険小説についてよく知らないのですが、
これまでに7度も映画化されているそうで、
相当人気のある作品であることが知られます。

井上勇さんの翻訳が、
1972年に創元推理文庫から出ていますが、
まだ手に入れていません。

そちらで読むと
また印象が変わって来ると思いますが、
私はそれほど魅力を感じませんでした。

粗筋を追うだけでは、
面白さが伝わりにくいところがあるのかもしれません。

ゆっくり、
もうそろそろ面白くなるだろう、
と思って読み進めているうちに、

いつの間にか読み終わっていました。
まあ、そんなこともあるでしょう。


Macmillan Readers の Beginner Level で
すぐに手に入るものは、そろそろ読み終わりそうです。
まだ上のレベルに進むのは早そうなので、
他の出版社のものも探していこうと思います。


※計11冊 90,434語。

2011年12月7日水曜日

【読了】落合博満 『采配』

落合前監督の退任を受けて、
『コーチング』を読み返そうかと思っていたところ、
その続編というべき新著が出版されました。

本屋で立ち読みし、
内容に魅了され、購入し、一気に読み終えました。



落合博満『采配』
(ダイヤモンド社、平成23年11月)


野球人の中で、
その著書を読んで、とても勉強になるのは、
野村前監督と、落合前監督です。

監督就任前に書かれた『コーチング』は、
私の座右の書です。

現代の日本で、
ほどほどの小さなグループを率いていく際に、
参考になる考え方で満たされています。

『コーチング』がその理論編であるとすれば、
『采配』はその実践編といえるでしょう。

勝負の世界で、
類まれな成功を上げられた本人から、
何を考えて、どのように実行していたのかを
詳しく教えていただけるわけですから、
たいへんな説得力があります。

この二著は、熟読して、
自分なりに消化していきたいと
思っております。

2011年12月5日月曜日

【読了】岡崎久彦 『陸奥宗光とその時代』

ドナルド・キーンさんの
『明治天皇』を読み終わり、

久しぶりに、
岡崎久彦さんの日本外交史5部作を
じっくり読み返したくなりました。

高校生の時に、
渡部昇一さんと谷沢永一さんが、
『陸奥宗光(上・下)』の評伝を紹介しているのを読んだのが、
岡崎久彦さんを知ったはじめでした。

同書をもとに、よりコンパクトに書き直されたのが、



岡崎久彦『陸奥宗光とその時代』
(PHP文庫、平成15年3月。初出は平成11年10月)


です。コンパクトとはいっても、
文庫本で600頁をこえる大作なので、
読みはじめるのに少し気合いがいりますが、
表現がとてもこなれており、読みやすく、
ひと月かからず、あっという間に読み終えていました。

当たり前のことかもしれませんが、
こうして読み返してみると、キーンさんのより遥かに面白いです。

また、読者として中高生が想定されているのか、
文庫版では、ほぼ総ルビになっていることも、
たいへんありがたいです。

大人であろうと、知らない人名は、
ルビをふってもらわないと読めません。

感想を書けるほどのことを私は知りませんが、
以前に読んだ時よりも、
内容に合点のいくところが多かったのは、
これまでの多少の勉強の成果かもしれません。


陸奥宗光の、驚くほどの頭の冴えと、
それゆえの挫折の数々。

でもそうした陸奥の天才を
政治家として活かしうる
伊藤博文の懐の深さ。

この二人が、
自由社会を擁護する英米の地政学的立場をよく理解し、
絶妙なバランスで、日本を導き得たことは、
誠に日本にとって幸運だったと思います。

今の時代を生きる我々は、
何をどうしたら良いのか、色々考えさせられる本です。

次は日露戦争の時代、
『小村寿太郎とその時代』に進みます。

2011年12月3日土曜日

【読了】Biscuit シリーズ③3冊(ICR My First)


Biscuit Wins a Prize
2004年(162語 YL 0.3)



Biscuit and the Baby
2005年(153語 YL 0.3)



Biscuit Visits the Big City
2006年(145語 YL 0.3)


by Alyssa Satin Capucilli
pictures by Pat Schories
(My First I Can Read Book)


しばらく忘れていましたが、

とてもやさしい英語の本、

ビスケットのシリーズ、あと6冊購入していますので、
2回に分けて紹介していきます。

久しぶりに読み返してみると、
大体の意味はすぐに取れるのですが、
文法的に厳密な読みをしようとすると、
かえって見なれない表現が出てきたりして、
迷うこともあります。

そんなに深読みしないで、
何となく親しんでおけば十分なのかもしれません。

もう少しいろいろ読んでいくと、
わかって来るような気はします。


英語の勉強のため、
というよりは、絵本としての完成度が高く、
楽しく読み進められるので、
絵本としてお勧めです。


1冊あっという間に読めてしまうので、

5冊くらいずつ読み進めて、
50~100冊くらいこのレベルのものを
読むつもりでいればおもしろそうですが、

それはふつうの家庭ではむつかしいことでしょう。



※YL(読みやすさレベル)については、
 古川昭夫 編『めざせ!100万語 読書記録手帳』
 (第6版、2010年4月)を参照しました。

2011年11月29日火曜日

【読了】Gaston Leroux, The Phantom of the Opera (MMR Beginner)

テスト週間と冬期講習の準備が重なって、
少し時間がかかりましたが、

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ10冊目は、フランスの作家 ガストン・ルルー
(1868年5月6日生 1927年4月15日没)の
小説『オペラ座の怪人』を読みました。



Gaston Leroux
The Phantom of the Opera

Translated from the French
and retold by Stephen Colbourn
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1998年刊(8,264語 YL1.6)


愛知に住んでいるので、
劇団四季のミュージカルとして、
『オペラ座の怪人』の名前はよく知っていましたが、
それを観に行く機会はなく、
また翻訳を読む機会もなく、
今に至りました。

リトールド版によって、
手短に、大まかなストーリーがつかめるのはありがたいです。

はじめフランスの人名に少し戸惑いました。

またオペラ座の中を上に下にと
行ったり来たりする様子が描写されているので、
文意をとるのに少し苦労しましたが、

切ない怪人の恋の物語へと集約されていくさまが興味深く、
後半から終わりにかけては、一気に読み終えました。


さすがに世界中で人気があるのもうなずけます。
次に名古屋で公演があるときには、
ぜひ観に行こうと思いました。


翻訳は、

 三輪秀彦 訳(創元推理文庫、昭和62年1月)
 日影丈吉 訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、平成元年5月)
 長島良三 訳(角川文庫、平成12年2月)

がすぐに手に入るようです。取りあえず、
長島訳を手に入れてみました。いずれ
時間があるときに読んでみようと思います。


※計10冊 80,867語。

2011年11月21日月曜日

落合監督退任

中日ファンなので一言。

9月22日の退任発表からほぼふた月。

日本一を目前にして、
落合監督率いるドラゴンズの闘いが終了しました。

8年間の長きにわたり、
強いドラゴンズを楽しませていただき、
ありがとうございました。

ドームに通うわけでもないので、
それほど熱狂的なファンとはいえないと思いますが、

ドラゴンズの優勝を願って、
シーズン中は毎日必ず結果をチェックして、
テレビのニュースに翌朝の新聞にと
楽しませてもらいました。

落合監督は、ちょうど私が
学習塾の仕事をはじめたころに
中日ドラゴンズの監督に就任されました。

当初、AクラスとBクラスを行ったり来たりしていたチームを
変革してくれる監督としてそれなりに期待されていましたが、
実際に何ができるのかはまったく未知数だったと思います。

恐らくここまでの好成績は、
誰も想定していなかったのではないでしょうか。


指揮官として、

部下を決して感情的に叱らないところ、
しかし能力はしっかり見極めて、結果で判断するところ、

時にひらめき重視というか、独特の感性にもとづいた、
しびれるような面白い采配を見せてくれるところ、

全体の結果はすべて自分で引き受けるところ、

そして何より、上よりも下(現場)に目が向いていたところが、

大好きでした。

結果が第一の世界で、
結果以外の理由で辞めさせられるのは、
落合監督にとってむしろ勲章でしょう。


近い将来、再びドラゴンズに
戻ってきていただければ一番うれしいのですが、

健康上の問題がなければ、早晩
他球団の監督に就任されるかもしれません。


来期のドラゴンズ、
8年間冷や飯を食ってきた中日OB陣が奮起して、
予想外に強いドラゴンズを示せるかどうかが分かれ目でしょう。

経営重視、OB重視というのは
責められるべき方針だとは思いませんが、

ファンあってのものなので、
来年早々にBクラスになるようなことがあれば、
少なくともOB重視の路線は転換せざるをえなくなるでしょう。


落合監督、
8年間ありがとうございました。

2011年11月16日水曜日

【読了】Charles Dickens, A Tale of Two Cities (MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ9冊目は『クリスマス・キャロル』で有名な、
イギリスの国民作家、チャールズ・ディケンズの長編小説
『二都物語』を読みました。



Charles Dickens
A Tale of Two Cities

Retold by Stephen Colbourn
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1997年刊(6,751語 YL1.6)


もとは長編ですが、
手短にあらすじをおえるように
うまくまとめられていると思います。

フランスの地名、人名の読み方がよくわからなかったので、
前半は少し時間がかかりましたが、
あとは一気に読み終わりました。

通俗的な歴史読み物ですが、
フランス革命(1789~1799)に対する
批判的立場から書かれている点が興味深かったです。

ディケンズは1812年生まれ、1870年に没しており、
『二都物語』は1859年に書かれています。

フランス革命を身をもって
体験しているとは言えませんが、
父や祖父の世代から見聞きしたことをもとに
書かれているとは考えられるので、

イギリスにおいて、
フランス革命がどのように受け止められていたのかを知る、
よい作品であると思いました。

フランス革命における人民裁判の様子を
イギリスの裁判と対比して描写している点も
興味深かったです。

翻訳は、

 中野好夫 訳『二都物語(上・下)』
 (新潮文庫。昭和42年1月)
  ※平成21年2月で61刷!

を手に入れましたが未読です。

長編なので今後時間ができたときに、
読んでみたいと思います。


※計9冊 72,603語。

2011年11月14日月曜日

【読了】塩野七生 『ローマ人の物語7 勝者の混迷(下)』



塩野七生『ローマ人の物語7 勝者の混迷[下]』
(新潮文庫、平成14年9月。初出は平成6年8月)

 第二章 マリウスとスッラの時代(承前)
     (紀元前一二〇年~前七八年)
 第三章 ポンペイウスの時代
     (紀元前七八年~前六三年)



また1冊読み終わりました。

マリウスもスッラもポンペイウスも、
ここで初めて読んだと申し上げて良い程度ですので、
他と比べてどうなのかは判断できませんが、
ここまでとても楽しく、読み進めております。

筆力というのは大切ですね。

次からは筆者が一番力を入れていたらしい、
ユリウス・カエサル伝がはじまります。

文庫本で6分冊されているので、
読み終わるのは来春ころかと思いますが、
また1冊ずつ読み進めて行こうと思います。

2011年11月8日火曜日

スマイルズ 『向上心』 第6章 (下2)



サミュエル・スマイルズ著、竹内均 訳
『向上心』(三笠書房、知的生きかた文庫、改訂新版、平成23年6月)より。

※印は栗木によるコメントです。

※スマイルズ著、竹内均 編訳による『向上心』、
 これで読了になります。
 原著の内容を読みやすいかたちで提供されており、
 たいへん勉強になりました。

 ただし原著をのぞいてみると、
 章立てからして違っておりますので、
 そちらも読んでみたくなって来ました。

 原著そのものか、中村正直さんの訳にまで遡って、
 ひきつづき勉強していきたいと思います。

第6章 人を動かす
(承前)


不幸は必ずしも苦しいものではない。

 一方では苦しみにつながるが、
 ある意味では幸せにつながる。

 悲しいものではあるが、
 修復できるし、
 またとない鍛錬ともなる。

 しかし、われわれ人間は、
 鍛錬となる面を見逃してしまいがちである。」253


※不幸は苦しいものです。
 不幸は悲しいものです。

 できるだけ、
 避ける努力をするべきでしょう。

 ただし人生で一つの不幸もない、
 ということもありえないわけですから、

 不幸の受け入れ方を知っておくことは大切だと思います。

 その後の修復に向けて、
 どのような努力をするかによって
 自分の人格を鍛錬する、
 またとない機会を与えられたのだ
 と考えるようにしたいです。

 わかっていてもなかなかできることではありませんが、
 不幸・失敗のあとの生き方が、
 一番大切です。


悲しいできごとや災いは、
 自分を向上させるための試練と考えよ。

 それはわれわれの気持ちを引き締め、
 節度ある考えをもたせ、
 軽率な態度をいましめ、
 罪深い行動から遠ざける。

 われわれは、不幸を通じて
 ますます徳を高め智恵を働かせ、
 耐える心を鍛え、
 勝利と栄光を目ざして
 ひたすら前進しなくてはならない。

 逆境に遭わなかった人間ほど
 不幸な者はいない。

 本人がよい悪いではなく、
 その人は試練を受けていないからである。

 才能があるとか性格がよいというだけでなく、
 徳にあふれた行動こそ
 勝利の王冠にふさわしいのである。

 (ジェレミー・テイラー)255

※試練のない人生、
 逆境のない人生って、
 ありえるのでしょうか。

 物事に挑戦する生き方を選んでいれば、
 どこかで失敗はつきものでしょう。

 もしかしたら、
 何ごとも挑戦しない生き方を選んでいれば、
 失敗しない人生を送れるのかもしれませんが、

 はじめから負けていればよい、
 という敗北主義の生き方は、
 誰にとっても楽しくないでしょう。

 試練にあって、
 それを一つ一つ乗りこえて行くことによって、
 人生は楽しくなるのだと思います。

 逆境にあって、
 試練にあって、
 それを乗りこえていくことを、
 楽しみとできるようにしたいです。

 そのためには、
 家族や恋人や友人の支えがあるかどうか、
 も大きいだろうと思います。

 人はなかなか、
 本当の孤独には耐え切れるものではありません。

 たとえ一人でも、
 全幅の信頼を置ける誰かがいてくれれば、
 試練に立ち向かうことは
 相当容易になると思います。

 そしてただ一人だとしても、
 死ぬ気になって数年辛抱する覚悟があれば、
 たいてい何とかなるものでしょう。


われわれは、
 人生の喜びを心から味わい、
 一方では
 苦しみを辛抱強く甘受しなくてはならない。

 泣き言や不平を言っても
 何の役にも立たない。

 明るさを失わず、正しい手段で
 黙々と働き続けることが
 何よりも有益である。
」258


人生は、その大部分を
 自分自身でつくっていくものである。

 一人ひとりが
 それぞれの心という大地の上に
 小さな世界を創造するのだ。

 明るい心の持ち主は楽しい人生を送り、
 不満だらけの人間は惨めな人生を送る。
」257

※家族とのつながりが密に過ぎると、
 時々自分が見えなくなることもあるでしょう。

 でもしかし、
 これは自分の人生なのだから、

 という視点はやはり大切でしょう。

 自分をある程度すてる姿勢は立派ですが、
 すてた結果、まわりに不満タラタラで、
 誰かに怒ってばかりの人生になるのなら、
 それは何かが間違っているのでしょう。

 自分の人生を、
 しかるべき義務を果たしながら、
 どのように明るく楽しく生きていくのか、
 考えていきたいものです。


たとえ貧しくても、
 ある者は王者の心を持ち、
 たとえ王であっても、
 ある者は奴隷の心を持つ。

 人生はその大部分が
 自分自身を映す鏡にすぎない。

 善良な者にとって世の中は善であり、
 悪人にとっては悪なのである。
」257

※成功するか、失敗するかは、
 ある程度、時の運も関係して来ます。

 万全を尽くしても、
 時には失敗することがあります。

 大切なのは、
 その過程をどのように生きたのかについて、
 自分なりの答えを持って、
 努力をし続けることでしょうか。

 自分の力を出し尽くして、
 それで失敗した場合は、
 とんでもなく悔しいにしても、
 それ以上は何ともし難かったわけですから、
 わりとさっぱりあきらめて、
 次へと努力していけるものです。

 心で、折れることがないようにしたいです。

2011年11月7日月曜日

スマイルズ 『向上心』 第6章(下1)



サミュエル・スマイルズ著、竹内均 訳
『向上心』(三笠書房、知的生きかた文庫、改訂新版、平成23年6月)より。
※印は栗木によるコメントです。

第6章 人を動かす
(承前)


人生の道を歩むにつれて、
 苦しみ・悲しみ・悩み・不幸・失敗などの
 暗い情景が道の行く手にあらわれる。

 清らかな心と堅い決意で
 これらを切り抜け、
 試練に明るく立ち向かい、
 どんな重荷を負わされても
 まっすぐに立っていられる人は
 何よりも幸せである。
」239

※時々、調子のいい時に、
 清らかな心と堅い決意を持って、
 物事に望める人は多いでしょう。

 しかし人生のどこかで、
 苦しみ・悲しみ・悩み・不幸・失敗が
 これでもかと押し寄せている最中に、

 清らかな心と明るい雰囲気を保って、
 堅い決意で試練に立ち向かって行ける人は少ないでしょう。

 家族の支えがあれば、
 まだ何とかなるかもしれませんが、
 家族との縁すら見放されている時に、

 清らかで明るい心を保ち続けることは
 たいへん困難なことだと思います。

 誰でもできることではありませんが、
 そこを切り開いていける人間は、
 確かに強いと思います。


孤独な生活を楽しんでいたとしても、
 その喜びは、所詮
 自己満足にすぎない。

 一人ひっそりと暮らすのは、
 他人を軽蔑しているからとも解釈できるし、
 それ以上に本人が
 卑怯な怠け者かわがままな人間であることを
 証明しているようなものだ。

 人にはそれぞれ
 与えられた仕事と義務があり、
 この二つは自分のためにも、
 また自分が所属する社会のためにも
 回避することはできない。
」240

※どちらかといえば、
 一人でひっそりと暮らしていく方が
 性に合っていますので、

 自分への叱咤激励として、
 こうした文章はためになります。

 一人静かに芸術に親しみ、
 学問をする生活に憧れるのですが、

 それは自己満足なんだよ、
 他人を軽蔑していることになるんだよ、
 卑怯な怠け者だ、
 わがままだ、

 と言ってもらえると、
 イケナイ、イケナイ、
 と思い直して、
 仕事に向かう気持ちが湧いてくるのでした。


実際的な知識を身につけ、
 いろいろな智恵を学ぶには、
 社会の一員として
 実生活に溶け込む以外に方法はない。

 社会の荒波にもまれてこそ、
 われわれは自分のやらねばならないことを知り、
 仕事のきびしさを知り、
 忍耐力・根気そして勤勉さを養い、
 人格を磨くことができるのである。
」240

※実際的な知識、ほんものの智恵を学ぶには、
 社会の中で、その一員として生きていくしかないんだ、
 ということは、
 若いころにもっと聞いておきたい言葉でした。

 社会の中で、
 仕事をしながら生きていくことによって、
 自分の人格が磨かれて、
 完成されていくのだ、ということも、
 若いころにもっと聞いておきたかったと思います。

 まだまだの人間ですが、
 確かに社会に出てから学んだことの重さは、
 学校で学んでいた時の比ではありません。

 人格を磨く道場として、
 仕事をはじめとした
 実社会の人間関係以上のものは考えられません。


他人とのふれ合いは
 自分自身を知るための必要条件でもある。
 大勢の人たちと自由に交わってこそ、
 人は自分の脳力を正当に評価できる。

 そうでなければうぬぼれが強くなり、
 思い上がった傲慢な人間になってしまう。

 そこまで行かずとも、
 その人は、他人とつき合わなかったために、
 一生、自分の本当の姿がわからずじまいで
 終わってしまうだろう。
」241

※これもまた、
 自分の殻に閉じこもりがちだった若いころに、
 聞いておきたかった言葉です。

 今でもそうした志向は変わりませんから、
 閉じこもりたい傾向な時に、時折読み返して、
 外に出るきっかけにしたいです。

 確かに、
 いつも一人きりでいたのでは、
 自分のたつ位置がわからなくなってしまいます。
 自分のうぬぼれを消すためにも、
 人とかかわる時期を持つのは絶対に必要ですね、


青春は人生の春である。

 若い寛容な心に種を蒔かなければ、
 夏になっても花は開かず、
 秋の収穫もおぼつかない。

 このような人生は
 春のない一年のようなものだ。

 情熱がなければ、
 何かに賭けて力を試すことも少なく、
 実りはさらに少ない。

 情熱があれば自信と希望に刺激されて
 労働意欲も湧き、
 ビジネスと義務の冷たい世界も
 明るく乗り越えることができるだろう。
」243

※青春が去ってみると、
 ああ、あの頃が青春だったんだな、
 とわかるようになって来ました。

 ある程度、
 やりたいことは実践してきたので、
 とくに後悔はありませんが、

 この時期を
 不完全燃焼で終わってしまった人は、
 基本的に取り返しがつきませんから、
 春のない人生をどう生きるのか、
 後悔の連続になるのかもしれません。

 ただし青春時代の情熱を、
 いつまでも持ちつづけることは誰にでもできます。

 歳相応にではあるでしょうが、
 それなりに元気ハツラツとした心情は、
 いつまでも保っていきたいと思います。

 精神的な部分では、
 いつまでも情熱的でありたいものです。


後世に残るような大事業を
 成し遂げるためには
 情熱が必要である。

 物事に打ち込む情熱がなければ、
 次々に降りかかる災難や障害に
 押し潰されてしまうだろう。

 しかし情熱によってかき立てられた
 勇気と不屈の精神があれば、
 危険にあってもひるまず、
 障害を組み伏せることができる。
」245

※私はどちらかといえば、
 情熱が内に向かうタイプなので、
 外からはそれほど情熱的だとは思われないはずですが、
 内に秘める情熱は、かなり熱いものがあります。

 それで若いうちはいろいろ失敗もして来ました。

 でもやはり、先に立つ情熱がなければ、
 何ごとも前に進んで行かないだろう、
 と思っています。

 どんな人生にも
 なにがしかの災難や障害は必ず待ち受けていますから、
 それを乗り越えられるだけの情熱は、
 体内に蓄えておきたいものです。


勇敢な人間はけっして挫折せず、
 成功するまで何回でも挑戦する。

 大木は最初の一撃ではビクともせず、
 くりかえし懸命に斧を入れることによって
 はじめて倒れる。

 成功した結果は
 われわれの目に映るが、
 そこに至るまでにくぐり抜けてきた
 危険や困難、そして労力のことは
 何もわからない。
」246

※10回、20回の失敗となると、
 視点を変えたほうが良い場合もあるでしょうが、

 数回の失敗で諦めてしまっては、
 なかなか成功を手に入れることは難しいでしょう。

 私はどうしても実現したいことであれば、
 とりあえず10回失敗するまではがんばることにしています。

 そのつもりで努力していけば、
 たいていそこまでの失敗を重ねるまでに、
 成功を手にできることが多いです。

 大切なのは覚悟を決めて、
 成功が保証されていない中で、
 成功を信じて、あきれるくらいの回数、
 挑戦することだと思います。

2011年11月5日土曜日

松原泰道 『釈尊のことば 法句経入門』 三章(上)


松原泰道『釈尊のことば 法句経入門』
(祥伝社新書、平成22年3月。初出は昭和49年)より。

※印は栗木によるコメントです。


三章 滅諦―心を安らげる知恵

私たちは、前二章において、
 『人生は苦である』との真理『苦諦』と、
 その苦の原因は『無常と執着による』との真理『集諦』を
 学習しました。

 それは病気に喩えるなら、
 病状と病原を知ることでした。

 病状と病原とが的確に把握できれば、
 必要な対応処置がとれます。

 しかし現状の苦痛がはなはだしいときは、
 “痛み止め”の処置が必要でありましょう。

 それが、これから学習する『滅諦』の章です。
」136


※第一章において、
 苦とはいかなるものであるのか、
 その真理「苦諦」について学びました。

 第二章において、
 苦の原因となるものは何か、
 その真理「集諦」について学びました。

 第三章において、
 苦をやわらげるためにはどうしたらよいのか、
 その真理「滅諦」について学びます。


滅諦は『無常観の炎を静め、
 執着を抑えることが安らぎである』
 との沈静の真理です。
」137

※この言葉の真意は、
 まだよくつかみそこねています。
 先に進んでから、
 もう一度ここに戻って来たいと思います。



わが身を
 泡沫(うたかた)のごとく
 陽炎(かげろう)のごとしと
 うなずくものは
 愛欲の魔の放(はな)つ花の矢を
 打ちおとし
 死王(しおう)の力の及ばざる領域に
 いたらん
』(一七〇)136

※ただひとりこの世に生まれ落ち、
 さまざまな悪に引き寄せられつつ生きるしかない、
 わが身の喩えようのない寂しさ(無常感)を、

 この世の真理(無常観)として、
 受け入れることができる者は、
 平穏な心を手にすることができる。

 松原さんの解釈に助けられながら、
 こんな風に読んでみました。


※しかし無常観を楽しむ境地というのは、
 それなりに自分自身で、
 人の世の苦しみ、悲しみを受け止めて、
 あの時死ななくて良かったな、
 と思えるような人生の経験を、
 その人なりに乗り越えてみてはじめて、
 見えてくるものであるように思います。

 無常観?
 なんだそれ?

 と笑い飛ばしたまま、
 一生終わっていたら、
 それが一番楽なのかもしれませんが、
 たぶんそれは余りないことではないでしょうか。



わが愚かさを
 悲しむ人あり
 この人
 すでに愚者にあらず
 自(みずか)らを知らずして
 賢(かしこ)しと称するは
 愚中の愚なり
』(六二)143

※みずからの愚かさを嘆きながらも、
 卑下することなく受け入れて、
 日々精進できる人は、
 愚かな人ではない。

 どれほど学力があっても、
 自分のことを自分で賢い、
 と思える者は、
 よほどの愚か者である。 

 こんな風に読んでみました。
 これはそのまま、異論なく理解できます。

※自分はなんて愚かなんだろう、
 という嘆きがなければ、
 少しでも向上したい、
 と思って精進し続ける自分もいないわけです。

 しかし割りとよくありがちなのが、
 愚かな自分に甘えて、
 どうせ自分は馬鹿だから、と
 一切の努力を止めてしまうことです。

 無気力からは何も生まれません。

 私は愚かだから、
 日々精進しなければならない。

 ここに自分の心を持っていけるように
 できるか、できないかが、大きな分かれ目です。



愛欲に溺(おぼ)れず
 憎しみを好まず
 善悪ともにとらわれざる
 こころ豊かなる人に
 悩みあることなし
』(三九)149

※愛欲に溺れてしまうのが人間です。
 愛欲に限りのないことを覚りきれるか。

 誰かを憎んでしまうのが人間です。
 誰をも憎まない心境を手に入れることができるか。

 表面の善悪に囚われやすいのが人間です。
 一時の善悪に囚われないで物事を見つめられるか。

 中道観(適正な心)を手にした人に、
 悩みはない。

 こんな風に読んでみました。



法(おしえ)に親しむものは
 眠り安らかなり
 こころは
 楽しく清らかなり
 ほとけの説きし法(おしえ)の中に
 知恵の眼は
 おのずと聞くなり
』(七九)154

※ほとけの説きし法、
 については第四章で語られるので、
 ここの一句は未解決のまま、
 次に進まざるを得ません。

 ただし、
 苦について真剣に向き合うのは、
 日々安らかで、楽しく清らかな心を手に入れたい、
 と願うからで、

 そのための
 釈尊による類まれな分析が
 仏教というものの本質で、
 ここに奇跡はなく、また
 オカルト的な要素もありません。

 徹頭徹尾冷めた目で、
 人の心を見つめる厳しい眼差しが、
 ここにはあります。

2011年11月2日水曜日

【読了】Louisa M. Alcott, Good Wives (MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ8冊目に読んだのは、
アメリカの女性作家、ルイザ・メイ・オルコット著
『若草物語 Little Women』の続編
『Good Wives』です。


louisa May Alcott
Good Wives

Retold by Anne Collins
(Macmillan Readers Beginner Level)


1999年刊(8,934語)

4姉妹のうち3姉妹が
恋愛し、結婚するまでのお話しです、
というと非常に簡単ですが、

ドタバタ劇や、
悲しい話も織り交ぜられて、
どちらかと言うと、
私にはこちらの続編の方が、
興味深く読むことができました。

アメリカの暖かい家族の
理想像が描かれているようで、
とても暖かい気持ちにさせられました。

邦訳はまだ読んだことがありませんが、
教室には、

 中山知子 訳(講談社 青い鳥文庫、新装版、平成22年5月。初出は平成9年)

を置いてあるので、近々読んでみようと思います。

その他、

 吉田勝江 訳(角川文庫、改版、平成20年11月))

がすぐに手に入るようです。


※計8冊 65,852語。

2011年10月31日月曜日

スマイルズ 『向上心』 第6章(中)


サミュエル・スマイルズ著、竹内均 訳
『向上心』
(三笠書房、知的生きかた文庫。改訂新版、平成23年。初出は昭和62年)

第6章 人を動かす

(承前)


どうしても自分の意見を発表して、
 対立する立場をとらなければならない場合がある。

 同調することが意志の弱さを示すのではなく、
 むしろ罪になる時だ。

 悪徳には抵抗すべきである。

 邪悪なものには泣き寝入りをせず、
 打ちのめさなければならない。
」228

※自分の意見というものは、
 組織の中にいるうちは、
 極力おもてに出さないほうが、
 まず間違いなく賢い生き方である。

 しかるべき時期というものは、
 十年に一度も来ない、と心得て、
 ふだんは絶対に
 本心を明らかにしないことが肝要である。

 しかしながら、
 たとえ時期を得ないにしても、
 反論を唱えてよいときがある。

 それは自分が無言の了解を与えることによって、
 組織が犯罪に加担する可能性があるときである。

 こう読んでみました。
 とてもわかりやすい、重要な指摘だと思います。


世界を正しい方向にリードし、
 支配するには、
 志操堅固で勇気ある人である。
 意志薄弱な人間は何の功績も残さない。
 まっすぐな精神を持ったエネルギッシュな人の一生は、
 世界を照らす光の軌跡にも似ている。
」229

※元気がある、
 ということは重要ですね。

 私は残念ながら、
 それほど元気あふれる人間ではないのですが、

 しっかり健康管理をして、
 いつもほどほどに元気な私を
 見せられるように心がけています。

 人さまにできるだけ
 よい影響を与えられるように
 なれるように心がけてはいます。
 

ごく人並みの力しかない平凡な人でも、
 活力にあふれた目的意識に刺激されると、
 思いよらぬ結果を生むことがあるのだ。
」232

※生徒を教えるときの、
 とても大切な観点だと思います。

 その子のやる気をどうひきだすか。
 自分からやる気になるにはどうしたらいいか。

 基本は、信じて待つことでしょうか。

 北風と太陽の、北風になってはいけません。

 とはいえ、できるわけないさ、
 と思って、黙って待っていても、
 まず上手くいきません。

 きっとできる、と本気で信じて、

 小さな成功を大げさに褒めて、
 何度失敗しても励まし続けて、
 一緒に努力していくことが、
 教育の基本だと思います。


世間が与えてくれる保証など、
 その多くは空しい一時の夢にすぎない。

 自分の力を信じて
 価値のある人間になるのが
 何よりも安全な道だと、
 自分にもわかりかけてきた

 (ミケランジェロ)232

※自分の評価は
 自分ですれば良い。

 案外、わが子のことを、
 その子の目の前で、
 ひどく見下げた言い方をする親が多いものです。

 親にすら信じてもらえないと、
 なかなか自分に自身はもてません。

 そんな不安定な状態で、
 社会に投げ出されると、
 周りの評価に一喜一憂して、
 なかなか自分をうまく保てなくなります。

 自分の中にちゃんとした価値が定まっていて、
 周りが何といっても、
 私はこれでいいんだ、
 という所に、落ち着けるといいな。


勇気とやさしさは矛盾するものではない。
 それどころか勇気ある行動をとる人は、
 男であっても女に負けないほどの
 やさしさと繊細な神経を持ち合わせているものだ。
 勇気ある人間は、同時にまた寛大な人間にもなり得る。
 いや、むしろ自然にそうなってしまう。
」233

※勇気が粗暴と結びつかないように。
 勇気は常にやさしさに結びついているように。

 やさしさが優柔不断と結びつかないように。
 やさしさは常に勇気と結びついているように。

 勇気とやさしさが隣り合わせになっていることは、
 しだいに気がついて来るものですが、

 はじめからそう教えておいてもらえると、
 粗暴さや、優柔不断に傾くことから、
 距離を置けるかもしれません。




度量の大きな人間は、
 幸運にめぐり合っても不幸にあっても
 極端な行動はとらないものだ。

 成功したからといって有頂天にならず、
 失敗したからといって
 立ち直れないほど悲嘆にくれたりもしない。

 危険は避けないが好んで求めもしない。
 心にかかることがほとんどないからである。

 口数は少なくしゃべり方もゆっくりしているが、
 必要とあれば思ったことを包み隠さず大胆に発表する。

 自分の実力を信じているから
 他人の長所をすぐに認める。

 侮辱を受けても無視する。

 自分や他人についてとやかく語ったりしない。
 自分がほめられたり
 他人が傷つけられたりするのを好まないからである。

 つまらぬことですぐにわめき散らしたりせず、
 人の助けを求めたりもしないのだ。

 (アリストテレス)235

※こんな私に、なれたらなと思う。

 こうして読むと、二千年前から、
 大人の理想像はそんなに変わらないんだな、
 と思う。

 正直、
 江戸時代の武士の心構えですよ、
 といわれたら、
 その通りだと思ってしまいます。

 西洋にせよ、東洋にせよ、
 高い価値を置く出来事に、
 大きな違いはないように感じる、
 とまで言ったら、言いすぎでしょうか。

 違いに着目すれば、
 違う国で、違う歴史を背負って生きてきたわけですから、
 いくらでも違いは見つかるでしょう。

 でもこういった道徳的な側面、
 何を敬って、何を尊いと考えるのかについて、
 人間が共通な価値観を持つことについて、
 もっと着目すべきなのかもしれません。

 国家の歴史において、
 責任ある立場にいる人たちが、
 いかなる価値を貴いと考えてきたのか、
 じっくる考えなおしてみたい、
 と思います。

2011年10月20日木曜日

【読了】Henry James, Washington Square (MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ7冊目は、
アメリカで生まれイギリスで活躍した小説家
ヘンリー・ジェイムズ(1843年4月15日生 1916年2月28日没)の
『ワシントン・スクエア』(1880年)を読みました。


Henry James
Washington Square

Retold by Margaret Tarner
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1999年(8004語)



ヘンリー・ジェイムズについて、
まったく知らなかったのですが、
調べてみると有名な方でした。

いわゆる恋愛小説ですが、
心理描写がしっかりとなされていて、
読み応えがありました。

リトールド版なので、
あっという間に、面白く読み通すことができました。

ハッピー・エンドには終わらないのですが、
重厚な、ある種の感慨におそわれる力強さがあり、
原著を読んでみたい、と思いました。


邦訳では、現在すぐに手に入るものとしては、

河島弘美 訳『ワシントン・スクエア』
(岩波文庫、平成23年8月)

があります。

他にも、より代表作と言われているものが
いろいろとあるようなので、調べて、
面白そうなのを読んでみたいと思います。


※計7冊 56,918語。

2011年10月15日土曜日

【読了】O.Henry, The Last Leaf and other Stories(MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ6冊目は、
アメリカの短編作家、オー・ヘンリーの作品集を読みました。


O.Henry
The Last Leaf and Other Stories

Retold by Katherine Mattock
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1999年(7,418語)



収録されているのは次の5作品です。

 The Good Burglar
 The Last Leaf
 A Lesson in Love
 The Jeweller's wife
 The Car is Waiting


情景描写に優れている作家なので、
リトールド版とはいえ、所々わからない単語がありました。
ただし、1作品に数語程度のことなので、
辞書をひいて調べて、解決しました。

オー・ヘンリーの作品は、
どれも一捻り趣向が凝らしてあって、
最後にやられた!と思わせられる、
少し軽めの、楽しいものが多いです。

私はそれほどのめり込むこともなく、
時々読んで、それなりに楽しんでいる、
といった感じでしょうか。


身近で手に入る邦訳のどれに対応しているのか、
調べようと思いましたが、

日本では、いまだ信頼するに足る
全集(かそれに近い著作集)は出ておらず、

また簡単に調べられる書誌のデータも
日本語では整理されていないようなので、

しばらくはこのまま放っておくことにしました。


わりと簡単に手に入って、
多めの作品数を収録しているものとしては、

 大久保康雄 訳
 『O・ヘンリー短編集』
  計3冊(新潮文庫、〈1〉昭和44年。〈2・3〉昭和62・63年)

 千葉茂樹 訳
 『オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション』
  計8冊(理論社、平成19・20年)

があります。教室には

 飯島淳秀 訳『賢者の贈り物』
 (講談社青い鳥文庫、新装版、平成21年10月。初出は平成2年)

を置いてあります。

オー・ヘンリーの孤独さ、
といったものが感じ取れるようになると、
面白みが増してくるように思いますが、

私にはまだ今ひとつの所があります。


※計6冊 48,914語。

【読了】ドナルド・キーン 『明治天皇(四)』



ドナルド・キーン著、角地幸男 訳『明治天皇(四)』
(新潮文庫、平成19年4月。初出は平成13年10月)


少し時間がかかりましたが、
キーンさんの大作『明治天皇』、
ようやく読み終えました。

日本の国民ですので、
明治天皇の名を知らないわけはありませんが、

どんなお方であったのかは、
詳しく勉強する機会がないまま、
今まで生きて来ました。

大変勉強になりました。

訳書でありながら、
最後まで飽きることなく、
読了することができました。

これはキーンさんの並外れた筆力とともに、
角地幸男さんのこなれた邦訳による所も大きいでしょう。


内容面では、
日韓併合に到るまでの経緯を
さめた筆致で詳しく伝えてあったのも
ありがたかったです。

また、大逆事件の経緯を
幸徳秋水の小伝とともに詳しく描き出し、
最後に、五・一五事件、二・二六事件などの
政府を転覆せんとするテロ行為と
結びつけているところも新鮮でした。

日本では、
二・二六事件の源流を、
大逆事件に結びつける考え方は、
ふつうになされているのでしょうか。

表面的な左右の思想に惑わされなければ、
どちらも政府転覆を是とする思想に貫かれた
いまわしい事件です。


Amazonで調べてみると、
英語の原著のほうも、まだ手に入るようなので、
近々手に入れておこうと思います。



Donald Keene
Emperor of Japan: Meiji And His World, 1852-1912
Columbia Univ Pr; New Ed版(2005)

【読了】Biscuit シリーズ②3冊(ICR My First)


Biscuit Want to Play
2001年(117語 YL 0.4)



Biscuit Goes to School
2002年(109語 YL 0.3)



Biscuit's Big Friend
2003年(138語 YL 0.3)


by Alyssa Satin Capucilli
pictures by Pat Schories
(My First I Can Read Book)


ビスケットのシリーズ、
何より絵がかわいらしくて楽しいです。

おそらく邦訳版を出版しても好評を得るのではないでしょうか。

英文はかなりやさしいレベル、
絵を見れば、ほぼ推測できるレベルだと思います。

が、

そもそも日本語の本を読む習慣がなく、

小中学校で、
英語に対してマイナスのイメージを抱いてしまったお子さんには、

英語の文字が書かれている、という時点でアウトでした。


もう少しレベルを落として試してみたい、
と思います。

 日本語の本を読む習慣がほとんどなかった子
 小中学校で、英語に対する劣等感、拒否反応を植えつけられた子

に対しても、何らかの糸口が見つかるといいな、と思っております。


※YL(読みやすさレベル)については、
 古川昭夫 編『めざせ!100万語 読書記録手帳』
 (第6版、2010年4月)を参照しました。